これまで行われていた「弱者いじめ」そのものであった買取や予約の強要は当然糾弾されるべきだが、シンゴさんの感じた通り、店長だって上司や本部から相当な圧力をかけられているのだから、やはり強要問題が根本的に解決されているとは言い難いのかもしれない。しかし、中には悪質ともいえる方法で、バイトやパート従業員に「実質買取」を迫るコンビニオーナー、店長がいる。宮城県仙台市のコンビニで働く主婦・中谷恵美さん(仮名)の告発だ。
「予約の強要問題はうちの店でも昨年問題になり、今年からなくなりました。毎年親や親族、ご近所さんにまで買っていただいていたのでやっと楽になったと思っていたら、オーナーから“12月25日の夜パーティーをやるから家に来い”と呼び出されまして…」(中谷さん)
毎年、厳しいチキンやケーキの予約ノルマを従業員に課してきたケチなオーナーが…と驚いていた中谷さんだったが、すぐにオーナーの奥さんがやってきて囁いた。
「“タダっていうのも気が引けるでしょ。会費は一律5千円ね”と。高いなーと思いつつオーナー宅に行くと、うちで販売していたケーキとチキンが卓上にズラリ。しかも呼ばれたのは私と大学生のアルバイトの女の子だけ…。あとから別のバイトの子に聞いたら、28日までパーティーに呼ばれた子がいて…」(中谷さん)
なんとケチなオーナー、バイトやパートに買取を強要できないからといって、会費をとるクリスマスパーティーに従業員を参加させることで、チキンやケーキの「実質的な買取」を強制させていたのである。
「実はお正月にも、会費制の新年会がオーナー宅で開かれたのですが、そこにもうちで販売しているおせちが並んでいたのです…。さすがに私たちも”やられた”と気が付きました。オーナー宅の大きな冷凍庫には、ケーキやおせちがまだまだたくさん入っていたのを見たという子もいます」(中谷さん)
このままでは節分の恵方巻、バレンタイン、ホワイトデーと、事あるごとにオーナー宅に呼ばれる可能性もあるとして、中谷さんはすでにブルーモード。一方、学生アルバイトの一人がSNSに「店長が買取を迫ってくる」と書いたが、地元の新聞社やテレビ局からコンタクトがあり、恐ろしくなって書き込みを消してしまったという。
あの手この手でバイトやパートを使い、売り上げを伸ばそうとする姑息な経営者もいれば、SNSの爆発力を理解し、経営者やその家族を思ってコトを胸に収めようとする弱者もいる、という現実だ。こんないびつな商売方法は、平成の終焉と共にぜひとも消え去ってほしい悪しき慣習であることだけは間違いない。