シェア奪取には若者の取り込みも欠かせない
過去にPTを試し吸いしたことがあるという40代の男性喫煙者もこういう。
「自分の健康だけでなく、家族や周囲の人に気を遣う目的もあって、一度はプルーム・テックを買って何日か吸ってみたのですが、いくら深く吸っても満足感が得られずに、結局、紙巻きに戻ってしまいました」
もちろん、JTがアイコスやグローに対抗する高温加熱型の新製品を出すとの情報は早くから駆け巡っていたが、出遅れた間、アイコスは限定商品や専用アイテムなどでユーザーを増やしたり、昨年11月には本体の充電時間や“連続吸い”、クリーニングのしやすさなどを改善した新型IQOSも発表。いまや加熱式たばこ市場で9割のシェアを独占する“独り勝ち”の状況を続けている。
完全にアイコスの後塵を拝してしまったJTだが、満を持して発売するPTの新製品は、従来の低温加熱で温度とたばこ葉の量を増した「プルーム・テック・プラス」(本体税込み4980円)と、アイコスと同じ高温加熱型ながらにおいを極力抑え、主力紙巻きブランド「メビウス」に味わいを近づけたという「プルーム・テック・エス」(同7980円)の2種類を同時に新発売する。
「巻き返しを図るJTの力の入れ方は半端じゃない」(経済誌記者)との声も聞こえてくるが、果たしてどこまでシェアを巻き返すことができるのか。『分煙社会のススメ。』などの著書があるジャーナリストの山田稔氏はこう見る。
「これまで1種類しかなかったPTのバリエーションが一気に3種類に増えたことで、ユーザーの選択の幅が広がり、多様なシチュエーションや好みに合わせた楽しみ方ができるメリットは大きいと思います。
ただ、加熱式たばこ市場は紙巻きからの乗り換え派が一巡して、早くも成長期から成熟期に入りかけているうえ、複数のメーカーのデバイスを購入して使い分けるユーザーはごく少数。そのため、PTのシェア拡大は、これまで取り込めなかった高齢者や若い世代への魅力アピールはもちろん、どれだけ“ライバル商品”から乗り換えさせることができるかにかかっています」
JTの岩井副社長は、「中長期的に加熱式たばこ市場の4割を握りたい」と意気込むが、強敵アイコスの牙城を崩すのは、容易ではなさそうだ。