安倍首相は北朝鮮や中国には毅然と対応しながら、ロシアには揉み手の柔軟姿勢が目立つ。国家主権のかかわる交渉では毅然とした姿勢を貫くべきだ。ロシアとの交渉では、強硬姿勢が相手方の譲歩につながるケースがしばしばある。
交渉の前途は厳しく、難航し、決裂する可能性もある。その場合日本は、北方領土問題をハーグの国際司法裁判所に提訴し、判断を委ねてもいいかもしれない。「交渉打ち切りカード」と「国際司法裁判カード」が、ロシアにはプレッシャーとなろう。
【PROFILE】なごし・けんろう/1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語学科を卒業。時事通信社ワシントン支局長、モスクワ支局長、外信部長、仙台支社長などを歴任後、2011年退社。2012年より現職。著書に『北方領土の謎』(海竜社)などがある。
※SAPIO2019年1・2月号