例えば、父親が長男に自宅と預金を信託して「生活や介護、医療の面倒を見てもらう」という契約を結び、受益人に「自分と妻、長女」を指定する。そうすると、長男は信託財産で両親だけでなく、姉の生活の面倒も見ることになる。
また、長男との契約とは別に、父親は次男には所有地に建てたアパートを信託し、「家賃収入でローンの残債と固定資産税を払う」という信託契約を結ぶ(受益者は父親)こともできる。
どんな目的で誰と信託契約を結び、どの資産を信託するか。親が亡くなった後の二次受益者まで指定するような複雑な信託契約を組むとなると素人には無理だ。後見制度及び家族信託制度に詳しい遠藤英嗣・弁護士はこう指摘する。
「家族信託の契約書を家族だけで作るのは絶対にやめてください。不動産や資産運用、税法の専門知識が必要なケースもあり、財産管理や相続につながる契約を素人だけで結べば、後々、予想もしなかったトラブルが起きる可能性が高い」
家族信託契約は必ずしも公正証書にする必要はないが、証拠能力が高い公正証書の契約書でなければ、銀行は信託口口座の開設に対応してくれないことが多いという。
※週刊ポスト2019年2月15・22日号