たとえば路線バスなら、こんな使い方が可能だ。バスがあと何分でその停留所に到着するか、という情報だけでなく、座席や床の下にセンサーを設置して車内の混み具合のデータをパケット通信網で送信する。そうすれば停留所で待っている客は、バスの混雑度が分かる。次に来るバスは混んでいるが、その次に来るバスは空いているからそれに乗ろう、という選択も可能になる。こうしたシステムにより、先行するバスに客が集中して乗降に手間取り、後に続くバスがガラガラのまま数珠つなぎに走る──といった光景を目にすることはなくなるだろう。
キーエンスはセンサーによる検査や測定だけでなく、それによって集まったデータの収集や処理まで行っている。IoTのみならず、IoEにも対応する会社と言えるだろう。キーエンスが平均年収トップの会社であり続けているのは、彼らがIoT技術で優位に立っているということにほかならないのである。
※大前研一・著『50代からの「稼ぐ力」』(小学館刊)より一部抜粋
【プロフィール】おおまえ・けんいち/1943年福岡県生まれ。1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年退社。以後、世界の大企業やアジア・太平洋における国家レベルのアドバイザーとして幅広く活躍。現在、ビジネス・ブレークスルー(BBT)代表取締役会長、BBT大学学長などを務め、日本の将来を担う人材の育成に力を注いでいる。