社員が働きやすい会社にするための、次原さんの“働き方改革”は非常にユニークだ。たとえば、「失恋休暇」や「恋愛勝負休暇」は、女性男性問わず、若い社員に人気だとか。社員の健康を維持するため、「毎日1万歩以上歩いたら月額3200円のボーナス」という福利厚生もある。題して、『幸せは歩いてこない』制度。
「白いリストバンドを身につけることで、貧困撲滅を訴える『ホワイトバンド』キャンペーンを展開した2005年、“集めたお金の使途が明確ではない”という批判を受けました。きちんと会計も公表しているのに、悔しかったですね。
あの頃からでしょうか、会社が大きくなるにつれ、女性社長だからと奇異な目で見られたり、信用力を不安視されたこともありました。“社長が女性だから、会社が信用されないのか。社員に申し訳ない”という気持ちがありましたね。所詮私は雑草女ですから、誰に何を言われようとも何も思いません。でも日本の男性社会で生きていくためには、世間からわかりやすい信頼も当時の会社には必要でした。2008年に上場を決意した理由の1つはそこでした」
次原さんは2016年11月、全世界を対象にした“ビジネス界のアカデミー賞”と呼ばれる「スティービーアワード」の女性経営者部門で金賞を受賞した。先進的なビジネス展開と共に、ユニークな福利厚生制度も評価されたという。米ニューヨークでの授賞式で、こうスピーチした。
《日本の上場企業約3700社において、女性が代表を務める企業は1%以下であり、女性創業者にいたってはほとんどいないのが現実です。このトロフィーが、日本のビジネスウーマンの未来を変える力になることを願っています》
今、次原さんが心待ちにするのは、PR事業でかかわる東京五輪だ。
「世界のトップアスリートのパフォーマンスを目の前で見て、“自分もスポーツをしてみたい”とワクワクする人を増やしたいんです。短期的な経済効果だけではなく、日本の将来を考えた時、普段からスポーツをする人が増え、健康寿命が延びれば、寝たきりの人も少なくなるし、医療費だって削減できる。何より、日本全体が活気づくはずです」
【プロフィール】
サニーサイドアップ代表取締役社長 次原悦子(つぎはら・えつこ)●1966年、東京都出身。“たのしいさわぎをおこしたい”をスローガンに、スポーツ選手のマネジメントや、大規模なイベントのプロモーションなど、常に世の中に話題を提供してきた。2008年、ジャスダック市場に上場。2016年、ビジネス界のアカデミー賞といわれるアメリカのスティービーアワード女性起業家の部門で金賞を受賞。2018年、東証一部に指定替え。
※女性セブン2019年3月21日号