──そんなご謙遜を。いまのコパさんなら、そんなことないんじゃないんですか。
コパ「いやいや、相手にしてくれないですよ。たとえば、日高で牧場に行けば、まずはその牧場のいい馬を見せてくれる。社台さんは違うでしょ? すぐにいい馬を出してきてはくれませんよ。ほかにいくらでも名だたる馬主さんがいらっしゃいますし。
実は、馬主になって2年目か3年目の時に(社台グループ主催の)セレクトセールで2頭買っているんですよ。後学のためにも行ってみようかと思いまして。まあ、高い馬は買えないから何百万円というのでしたけど、全然走りませんでした(笑)。
とはいえ、吉田照哉さんとは個人的には仲がいいんです。人間的にもホースマンとしても尊敬していますしね。あの人たちがいたから今の競馬があるわけだし。ただ、僕の競馬とは違うというだけのことでして」
──では、今後も買わない?
コパ「買うことはないですね。あれ、断言しちゃったよ(笑)。だって、日高の人たちはありがたいことに『コパは日高のオーナーだ』と思ってくださっている。それを考えれば、もうそれでいいじゃない。リッキーもリチャードも日高で種馬になっているし、残りの馬主人生を考えても、あとは日高を回っていればそれだけで十分でしょう。
それこそおじいちゃんおばあちゃんがやっている小さな牧場もたくさんある。もう、日高にふるさと納税しているような気分なんです(笑)。そんな思いれのある馬が走るたびに、その人たちも喜んでくれる。個人馬主として、そんないい人生ないんじゃないかな、と思いますよ」
斜陽が伝えられる馬産地・日高に想いを馳せながらも、コパ氏は最後に馬主としての夢を語ってくれた。
コパ「いろんな競馬のあり方があるとは思いますけど、今回(フェブラリーステークスに藤田菜七子騎手騎乗)の件で分かったのは、実はファンは僕みたいなオーナーを求めていたのではないか、ということです。あの時、7枠11番の菜七子を買った人たちは夢馬券を買ったんじゃないのかな、と思って。もちろん馬券好きな人の中には、菜七子人気のあおりで他の馬のオッズが上がるということで、『おい、これで高配当の馬券が取れるぞ』と言ってくる人もたくさんいました。まあ、さみしいけど、それもそれで競馬でしょう。
でも、とにかく今は『夢のある競馬』という部分が減っているから。そこをやってみたいというのがオーナーであるコパの気持ちなんです。
いまは顔の見えているオーナーが少なくなったけど、将来ファンの方の間で『コパさんがキッキングに菜七子を乗せたんだよな、オレあのレース見たんだよ』と語り継がれたら、それだけでも僕がやったことは大正解だったじゃないですか。本当にそう思いますよ」
【PROFILE】Dr.コパ/本名:小林祥晃(こばやし・さちあき)。1947年東京都生まれ。日大理工学部卒業。一級建築士、神職(石見一宮物部神社)、愛知工業大学客員教授。日本の風水・家相の第一人者。ラブミーチャン、コパノリッキー、コパノリチャードなどGIホースのオーナーとしても知られる。