要するに、相続人の存在が明らかでない場合、遺品は法人となり、家庭裁判所が選任する相続財産管理人が遺品を管理し、死者の債権者がいれば、遺品を競売で換金して清算します。さらに家庭裁判所は、療養看護に努めたなどの理由で特別縁故者として相当と認める人に財産を分与、なお残った財産は国庫に帰属することになっています。
つまり、身寄りがなくても、遺品は法定相続人の物か、相続財産法人を構成する物なのです。ごみ同然の無価値の物を処分しても、誰も問題にしないでしょうが、財産的価値のある物は勝手に持ち出せません。
死者が持っていた物は、その死亡により、占有を離脱したもので、あなたではない第三者の物ですから、遺失物横領の罪に問われる可能性もあります。高価な物は警察に遺失物届を出し、その処理に委ねるのが賢明です。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年3月29日号