ビジネス

鉄道でも始まった「QRコード決済」はどこまで浸透するか

紙であるQRコード乗車券は従来の磁気乗車券と違って燃えるゴミ

 QR乗車券を導入したことで、沖縄都市モノレールの改札機にはきっぷの挿入口がない。そのため、島外からの観光客が戸惑うこともあるという。しかし、デメリットはそれぐらい。通常のきっぷと比べ、特に支障は出ていないようだ。

 磁気券からQR乗車券への切り替えは、鉄道事業者におけるQRコード導入の一環ではある。しかし、これはQRコード決済とは言えない。あくまでQRコードを活用した一事例に過ぎない。

 沖縄都市モノレールでは、QR券だけではなく、スマホ画面にQRコードを表示させて、IC乗車券と同様に読み取り部分にタッチして運賃を支払う方式も実験した。だが、中国のアリババによるAlipay(アリペイ)だけの対応だったこともあって、ゆいレールでQRコード決済はあまり利用されなかった。

 昨年から今年にかけてQRコード決済をめぐる日本の状況は大きく変化した。それまでは、前出のAlipayや中国版LINE微信のWeChatPay(ウィーチャットペイ)を利用する中国からの訪日観光客による利用がほとんどだった。しかし、昨年末の100億円キャンペーンで話題を振りまいたヤフーのPayPay (ペイペイ)を皮切りに、LINE Pay(ラインペイ)など、現在は日本企業によるサービスがいくつも登場。わずかな期間で、スマホを使ったQRコード決済は若者の間では当たり前のように使われるようになった。

 そうした社会の変化を捉え、湘南モノレールでは今年4月から一部の乗車券やグッズなどをPayPayで購入できるようにした。湘南モノレールの担当者は、言う。

「湘南モノレールは、長らくSuica やPASMOといったIC乗車券に未対応でした。2018年からIC乗車券が利用できるようになりました。それにより、利用者が増えています。そうした事情を踏まえ、2019年3月からPayPayを導入することを決めたのです」

 湘南モノレールでは、PayPayで磁気券と呼ばれる通常のきっぷを購入することはできない。通常のきっぷを購入するには、従来の方法で買うしかない。そのため、PayPay導入で鉄道の利用者が増えたわけではない。それでも、PayPayの導入は大きな効果があったと担当者は説明する。

「PayPayを導入したことにより、弊社が経営する湘南ボウルというボーリング場の利用者が増加しました。導入した時期が春休みシーズンだったこともありますが、主に中高校生がPayPayを利用しているようです」(同)

 沖縄都市モノレールや湘南モノレールといった鉄道事業者は、規模が小さいゆえに設備更新の費用も少なくて済む。改札機更新のタイミングに合わせれば、QR導入のハードルは低い。

 一方、大手鉄道事業者にはすでにIC乗車券が広く普及している。これまで構築してきたシステムから、QRコードへと切り替えるのは大掛かりな作業を伴う。費用も桁違いになるだろう。また、IC乗車券に比べるとQRコードは、読み取りにワンテンポの間がある。IC乗車券に慣れていると、QR乗車券やQRコード決済のタイムラグに戸惑ってしまう。それだけに、簡単にIC乗車券からQRへと切り替えられないといった事情もある。

 おしなべて大手鉄道事業者がQR乗車券やQRコード決済の導入に二の足を踏む中、東京メトロが2020年をメドにQRコードの活用を模索している。

「現段階ではQRコード活用の方針を決めただけなので、QR乗車券の導入になるのか、それともQRコード決済を導入するのかは不明です。細かい部分は、これから詰めることになります」(東京メトロ広報部広報課)

 現在、国内におけるキャッシュレス決済比率は約18パーセント。2025年までに、政府はこの比率を40パーセントへ引き上げることを目標にしている。

 JR東日本でもQRコードのリーダー機能を備えた券売機が登場しているが、今のところは活用されていないようだ。果たして、鉄道業界でQRは浸透するのか?

関連キーワード

関連記事

トピックス

小室圭さんの“イクメン化”を後押しする職場環境とは…?
《眞子さんのゆったりすぎるコートにマタニティ説浮上》小室圭さんの“イクメン”化待ったなし 勤務先の育休制度は「アメリカでは破格の待遇」
NEWSポストセブン
遺体には電気ショックによる骨折、擦り傷などもみられた(Instagramより現在は削除済み)
《ロシア勾留中に死亡》「脳や眼球が摘出されていた」「電気ショックの火傷も…」行方不明のウクライナ女性記者(27)、返還された遺体に“激しい拷問の痕”
NEWSポストセブン
当時のスイカ頭とテンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《“テンテン”のイメージが強すぎて…》キョンシー映画『幽幻道士』で一世風靡した天才子役の苦悩、女優復帰に立ちはだかった“かつての自分”と決別した理由「テンテン改名に未練はありません」
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《ヤクザの“ドン”の葬儀》六代目山口組・司忍組長や「分裂抗争キーマン」ら大物ヤクザが稲川会・清田総裁の弔問に…「暴対法下の組葬のリアル」
NEWSポストセブン
1970~1990年代にかけてワイドショーで活躍した東海林さんは、御年90歳
《主人じゃなかったら“リポーターの東海林のり子”はいなかった》7年前に看取った夫「定年後に患ったアルコール依存症の闘病生活」子どものお弁当作りや家事を支えてくれて
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
中川翔子インスタグラム@shoko55mmtsより。4月に行われた「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート2025」には10周年を皆勤賞で参加し、ラプンツェルの『自由への扉』など歌った。
【速報・中川翔子が独立&妊娠発表】 “レベル40”のバースデーライブ直前で発表となった理由
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
《“美女すぎる”でバズった下北沢の女子大生社長(20)》「お金、好きです」上京1年目で両親から借金して起業『ザ・ノンフィクション』に出演して「印象悪いよ」と言われたワケ
NEWSポストセブン