ビジネス

鉄道でも始まった「QRコード決済」はどこまで浸透するか

QRコード乗車券を改札に通す

 量販店やコンビニなど利用シーンが増え、ポイントやキャッシュバックキャンペーンによって、QRコード決済が急速に普及している。鉄道事業者の一部でもQRコード決済の導入が始まった。ライターの小川裕夫氏が、QRコード決済がどのように導入をすすめられ、検討されているのかについてレポートする。

 * * *
 JR東日本のSuicaをはじめとするIC乗車券は、すでに広く定着した。総発行枚数は7000万枚に及び、2018年度だけでも約790万枚も発行されている。最近では、コンビニやファミレス、スーパーなど街のいたるところでも使用できるようになった。

 紙のきっぷとは異なり、IC乗車券は改札機で紙詰まりエラーを起こすことがない。また、中に溜まった紙のきっぷを回収する作業も生じない。

 乗客にとっても便利だが、IC乗車券は鉄道事業者にとっても大幅に駅業務を省力化することが可能なツールとして積極的に導入が進められた。

 IC乗車券の導入が進んでいた鉄道事業者だったが、ここにきてQRコードを乗車券の券面や支払いに活用する、QRコードの活用を模索する兆しが出ている。

 バーコードを四角形にしたようなQRコードには、見慣れた横長のバーコードより多くの情報を付与でき、漢字やかなが混じる日本語の情報にも対応しやすい。スマホを使えば、QRコードに書き込まれた情報が読み取ることができるので、最近はクレジットカードのように現金がなくても、QRコードを読み取ることで商品を購入することが可能になった。ほかにも、QRコードはさまざまな場面で活用できる。

 QRコード決済がクレジットカードやICカードと大きく異なるのは、専用の読み取り端末を必要としない点にある。導入コストが安く済むため、飲食店を中心に個人経営店で急速に普及している。

 一方、JR東日本や東海、大手私鉄ではIC乗車券が広く使用されている。まだQRコードの本格導入は始まっていない。

 IC乗車券にしろQRコード乗車券にしろ、いずれにしても鉄道事業者は改札機を設置しなければならない。大手の鉄道事業者では、すでにICを読み取れる改札機を設置している。それなのに、わざわざQR乗車券やQRコード決済に対応した改札機に切り替える必要はない。

 しかし、地方に目を転じれば事情は異なる。地方の中小鉄道にとって、IC乗車券を導入するコストは大きな出費になる。そのため、地方の鉄道では、いまだIC乗車券は普及しておらず、IC乗車券に対応した改札機も普及していない。地方の鉄道路線だったら、QR改札機を設置する余地がある。

 ゆいレールを運行する沖縄都市モノレールは、2014年にQRコードが券面に刷り込まれたQR乗車券の販売を開始した。沖縄都市モノレールの営業企画課担当者は、導入の経緯をこう話す。

「QR乗車券を導入した背景は、それまで使っていた自動改札機の更新がきっかけです。それまでの乗車券は、裏面に磁気データが刷り込まれていました。そのため、使用済みのきっぷは産業廃棄物として処分しなければなりません。一方、QR乗車券は単なる紙です。簡単に処分できます。磁気券の処分は業者に頼まなければならず、費用がかさみます。処分費用を縮減できたことが、QR乗車券を導入した最大のメリットです」(同)

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン