グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(70)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。
歌手の大川栄策(70)が持ってきたのは、デビュー3年目の自分のLP『孤独の唄』。恩師・古賀政男監修『孤独の唄』は、刑務所で受刑者が歌い継ぐ愛唱歌を歌唱したものだが、発売すぐに放送禁止歌となった曲を含む、いわく付きLPである。
「23歳のひよっこが、人の心の奥底にある遺恨の涙や魂の叫びを表現するのは難しかったね。今思えば、古賀先生は演歌の本質である人の哀しさ、辛さ、切なさをメロディーに乗せて表現することを僕に課したのだと思う」
半世紀にわたり歌い続ける大川氏の礎といえる1枚なのだ。
「人生は演歌そのもの。不器用だから歌以外に何かしようとは、からっきし思わない。ただ、人に迷惑をかけないのがテーマだね」