芸能

時給30円だった伊東四朗の人生を変えた喜劇俳優のひとこと

伊東四朗の人生を変えた一言とは

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・伊東四朗が俳優としてスタートを切ったきっかけ、喜劇俳優の石井均一座で役者を始めた日々について語った言葉をお届けする。

 * * *
 伊東四朗は一九五八年、喜劇俳優の石井均が率いる一座に加入、役者としてスタートを切る。

「役者になる気は全くなかった人なんです。とにかくサラリーマンになることだけを考えて就職試験を受けたら、一社も採ってくれなくて、早稲田の大学生だった兄貴に生協のバイトを斡旋してもらいました。時給三十円で牛乳の蓋をとる仕事でした。

 その頃、新宿のフランス座というヌード劇場にしょっちゅう行ってまして、いつも同じ席にいたから舞台上からでも目立ったんでしょうね。階段を降りて帰ろうとしたら、上の楽屋の窓がちょうど開いて、石井均さんと目が合った。当時はストリップの合間をコメディアンが繋いでいて、石井さんもそこにいたんですね。それで『おい、寄っていけ』と言われました。

 この数秒間がなかったら、今ここにいません」

 石井の招きで楽屋に入り浸るようになった伊東は言われるままに一座に参加、初舞台を踏むことになった。

「『お前、公衆便所が舞台の真ん中にあるから、そこからジッパーを上げながら出てきて口笛吹いてどっかいけ。それだけのことだよ』と言われて。それが私の初舞台。よほどの俳優さんでも舞台で歩くのは大変らしいんですが、こちらは牛乳やりながらで気楽なもんなんでね、そうでもなかったですよ。

 ただ、いい気分だったんです。それで『この仕事、やってみるか』と石井さんに言われた時、『時給三十円で蓋を開けるだけの人生もどうかな』と思っていて。ところが、その時に生協から正社員にならないかと言われたんです。保険も有給休暇もある。でも揺らめいたんです、なんかジッパー上げてトイレから出る方が。それでなんとなく気持ちがそっちに動いちゃって」

関連キーワード

関連記事

トピックス

違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
《不動産投資会社レーサム元会長・注目の裁判始まる》違法薬物使用は「大きなストレスで…」と反省も女性に対する不同意性交致傷容疑は「やっていない」
NEWSポストセブン
女優・福田沙紀さんにデビューから現在のワークスタイルについてインタビュー
《いじめっ子役演じてブログに“私”を責める書き込み》女優・福田沙紀が明かしたトラウマ、誹謗中傷に強がった過去も「16歳の私は受け止められなかった」
NEWSポストセブン
告示日前、安野貴博氏(左)と峰島侑也氏(右)が新宿駅前で実施した街頭演説(2025年6月写真撮影:小川裕夫)
《たった一言で会場の空気を一変》「チームみらい」の躍進を支えた安野貴博氏の妻 演説会では会場後方から急にマイクを握り「チームみらいの欠点は…」
NEWSポストセブン
中国の人気芸能人、張芸洋被告の死刑が執行された(weibo/baidu)
《中国の人気芸能人(34)の死刑が執行されていた》16歳の恋人を殺害…7か月後に死刑が判明するも出演映画が公開されていた 「ダブルスタンダードでは?」の声も
NEWSポストセブン
13日目に会場を訪れた大村さん
名古屋場所の溜席に93歳、大村崑さんが再び 大の里の苦戦に「気の毒なのは懸賞金の数」と目の前の光景を語る 土俵下まで突き飛ばされた新横綱がすぐ側に迫る一幕も
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(右・時事通信フォト)
「言いふらしている方は1人、見当がついています」田久保真紀氏が語った証書問題「チラ見せとは思わない」 再選挙にも意欲《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、夫の音楽家・塩入俊哉氏(時事通信フォト、YouTubeより)
「結婚前から領収書に同じマンション名が…」「今でいう匂わせ」参政党・さや氏と年上音楽家夫の“蜜月”と “熱烈プロデュース”《地元ライブハウス関係者が証言》
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(共同通信/HPより)
《伊東市・田久保市長が独占告白1時間》「金庫で厳重保管。記録も写メもない」「ただのゴシップネタ」本人が語る“卒業証書”提出拒否の理由
NEWSポストセブン
7月6~13日にモンゴルを訪問された天皇皇后両陛下(時事通信フォト)
《国会議員がそこに立っちゃダメだろ》天皇皇后両陛下「モンゴルご訪問」渦中に河野太郎氏があり得ない行動を連発 雅子さまに向けてフラッシュライトも
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、経世論研究所の三橋貴明所長(時事通信フォト)
参政党・さや氏が“メガネ”でアピールする経済評論家への“信頼”「さやさんは見目麗しいけど、頭の中が『三橋貴明』だからね!」《三橋氏は抗議デモ女性に体当たりも》
NEWSポストセブン
かりゆしウェアをお召しになる愛子さま(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《那須ご静養で再び》愛子さま、ブルーのかりゆしワンピースで見せた透明感 沖縄でお召しになった時との共通点 
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏(共同通信)
《“保守サーの姫”は既婚者だった》参政党・さや氏、好きな男性のタイプは「便利な人」…結婚相手は自身をプロデュースした大物音楽家
NEWSポストセブン