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2019.05.01 16:00  NEWSポストセブン

アグネス氏語る「子連れ出勤から考える、令和時代の子育て」

新刊『未知に勝つ子育て─AI時代への準備─』トークショーでは、話題のAIロボットと共演(撮影/高柳茂)

 その渦中は新米ママだったので、今のように自分の信念を理論立てて語れなかった。後輩に道を拓こうと働くママとして歯を食いしばって頑張っていましたが、家では泣いてしまうこともありましたね。長男をお風呂に入れながら、お風呂場で泣くんです。でもそれを夫に見られて、「泣いたってしょうがないよ。本当に自分が正しいと思うならアグネスの生き方で証明しなさい」とたしなめられたんです。その言葉はすごく重く感じました。

 だけど生き方や子育てで証明するといっても人生は長い。子供がどう育つかもわかりませんし、先の予測はつきませんから。それでも「女性にも人生の選択肢がある。子連れ出勤という選択も決して悪くないよ」と証明するためにも、私が選んだ人生を謳歌しないといけないと、身が引き締まりました。

◆アメリカでは「なぜそれが論争になるの?」という反応

 そうした状況が2年ほど続き、アメリカのニュース雑誌『TIME』に掲載された「アグネス論争」の記事がスタンフォード大学教授の目に留まって、教授の誘いで渡米して同大の教育学部博士課程へ入学することに。3歳になる長男を連れ、次男を妊娠中での留学でした。アメリカでは、「アグネスが母乳で育児をしたいなら、職場へ連れて行ってもいいんじゃない。どうして日本ではこれが論争になるの?」という反応で、教授には「社会で女性が男性よりも不利になるのは、決して当たり前じゃないのよ?」と言われて、学問として学ぶことを勧められたんです。

 大学では毎日何十本と論文を読み、仲間と議論を重ねる中、講義の間は子供を託児所に預けていました。それも驚きだったのですが、大学の中に先生や学生のための保育園がいくつもあるんです。また、当時はまだコンピュータもなく調べ物は図書館でしたので、週末になると学部の若い学生がキャンパスでピクニックをして子供と遊んでくれるんです。その間に親である学生は必死で勉強する。子育てしながら学んだり、働いたりすることにこんなにも協力的な社会もあるのだと、感動して涙が出ました。そうした環境や学問から、女性が差別される社会がいかに偏っているかと学んだんです。

◆「母親」の前に「女性」の尊重を

 あれから30年経ち、日本でも働き方改革の一環として、政府が子連れ出勤を後押しする姿勢を打ち出しています。子育て対策として女性を応援することは素晴らしいです。ただし、少子化のためという意図が透けてしまっては「産まなければ国からサポートをしてもらえないのか」と、女性たちにプレッシャーを与えてしまうのではないでしょうか。少子化だから子連れ出勤を支援するという感覚は少しずれていると思います。女性が輝く時代を創出するためには、子育てと切り離して考えなくてはいけない。産むでも、産まないでも、どんな女性も平等に社会を支えているのですから。

 子供が大事だから女性を応援するのではなく、女性が大事だから政策を作る。そうなれば女性も安心して、結果として子供がついてくると思います。私自身は子供が大好きで子供を大切にする政策は大歓迎ですが、現状では女性ではなく、「母親」を大事にしたいだけではないかと感じてしまう。それでは子育てが終わった私たち世代も含めて、置いてきぼりになってしまう女性たちがたくさん出てきてしまいます。世の中は子育て中の女性だけではないし、子供が好きな女性ばかりではありません。少子化は大きな問題ですが、「産め、産め」と推奨する以外にもAIや海外の人材活用など、視野を広げていけば人口減少をカバーする方法はいくつもあるでしょう。まずは凝り固まったマインドセット(考え方)をチェンジするべきだと思います。

◆令和の子育て=「ルールは守るものではなく、打ち破るもの」

 今回、『未知に勝つ子育て AI時代への準備』(小学館)と題して、来るAI時代へ向けた未来型の教育について自分の経験や知識をまとめましたが、インターネットの世界では男女差や貧富の差、年齢、国籍、障害の有無などすべて関係なくなっていきます。「男性だから」「女性だから」「子供を産んだから」「子供がいないから」「若いから」「高齢だから」と差別することが無意味になっていくでしょう。

 属性ではなく、尊重すべきは個々の人間らしい発想や夢見る力、既存のルールを打ち破って新しい常識を作っていく力です。これまではルールに則ることが美徳とされ恩恵も得られましたが、今後はそれでは淘汰されてしまうでしょう。なぜなら、それはAIのほうが得意ですから。頼るべきは固定観念や他人のものさしではなく、自分のものさし=価値判断です。だからこそ、親世代もマインドセットを変えないと、子供たちまで“化石”になってしまいますよ。そうした意識改革の一助になればという願いも込め、この本は親としてはもちろん、大人世代の学びについても深く触れています。

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