約300年ぶりに再建され、落慶法要が営まれた興福寺の中金堂(時事通信フォト)

 お釈迦様もかつて、人はなぜ皆、老いて病となり、死んでいかねばならないのかという「生老病死」の命題に悩み、そこから解放されようとして、王子の身分を捨てて出家します。けれどもお釈迦様が修行の結果にたどりついた結論とは、そういう人間の欲求や欲望とは、満たしてしまえばさらに大きく膨れあがるということでした。

「こうなりたい、ああなりたい」「あれが欲しい」という欲そのものを滅ぼさなければ、人間は救われないのです。

 現代社会とは、「モノの追求」にとらわれた場所です。サラリーマンの仕事というのも、その多くは「新しい物を開発し、製造して販売する」ことです。

 誰かが常に新しいものを作り出し、誰かが買い続けないと、現代社会は回らない。物を追いかけることが生活の中心になって、心の問題が置いてきぼりにされる。

 サラリーマン社会から離脱したとき、物を追い続けてきた人は、そこで初めて自分の心に大きな空洞が開いているのに気づくことが少なくありません。そしてそのとき、自身にまとわりつく老いに怯えて、必死になってアンチ・エイジングに走る。なんだか悲しい姿に思えます。

 そのような現代人こそまさに、「心を鍛える」必要があると感じます。

●たがわ・しゅんえい/1947年奈良県生まれ。立命館大学卒業。法相宗の僧侶で、大本山興福寺貫首・法相宗管長・帝塚山大学特別客員教授。著書に『貞慶「愚迷発心集」を読む』『観音経のこころ』(春秋社)、『旅の途中』(日本経済新聞社)、『阿修羅を究める』(共著、小学館刊)など。

◆取材・文/小川寛大(『宗教問題』編集長)

※週刊ポスト2019年5月17・24日号

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