やました氏は以前から『断捨離』を商標登録していた。弁理士・古岩信嗣氏が解説する。
「商標登録とは、ある言葉などに『商標権』を生じさせる手続きのこと。商標権には大きく2つの権利があり、1つは、登録した商標を商品などに使用する『使用権』、もう1つは、他人の使用を禁じ、二重の商標登録を排除する『禁止権』です。
この『禁止権』により、使用権のない人が他人の登録商標を権利範囲内において無断で使用する行為は“商標権侵害”となります。その場合、権利者から差止請求をされる、損害賠償を請求されるといったことが起こりうる。また、著名ブランドのコピー品を営利目的で販売するといった悪質なケースだと、10年以下の懲役刑や1000万円以下の罰金刑あるいはこの両方が科され、逮捕されることもあり得ます。商標権の侵害は非常にリスクの高い行為といえるでしょう」
商標権は今回の例でいう『断捨離』のような言葉と、その権利の指定する「商品・役務(サービス)」がセットで登録される。『断捨離』の場合は、〈放送番組の制作〉や〈書籍の制作〉、〈セミナーの企画運営又は開催〉など多数の項目がセットで登録されている。
テレビ局が権利者のやました氏に許可なく『断捨離』を番組名やタイトルとして使用したのであれば、商標権の侵害にあたる可能性があるという。
「やましたさんは自らが発案した『断捨離』を、言葉尻やイメージだけをとらえて軽々しく使ってほしくないという思いが強い。
2回目の放送の後、やましたさんサイドから日テレに『断捨離』が登録商標であるという指摘が入ったそうです。しかし、日テレはうまく対応できなかった。現在は互いに弁護士を立て調停中だと聞いています」(前出・日本テレビ関係者)
権利者が商標権を行使する際、一般的には「警告及び示談」で終わるが、警告を受けた側が反論して、示談がまとまらない場合は「裁判所に訴える」ということになる。場合によっては、高裁や最高裁までもつれることもある。
高視聴率をマークしていたにもかかわらず『ナカイの窓』が今年3月で“打ち切り”となった背景には、この「断捨離問題」があったようだ。
やました氏との民事調停の事実や、番組打ち切りとの因果関係について日テレに聞くと、「断捨離の件につきましては現時点でお答えできることはありません。その他、番組編成の詳細についてはお答えしておりません」(広報部)と答えるのみだった。また、やました氏にも取材を申し込んだが、期限までに回答を得ることができなかった。
前出の古岩氏はこう言う。