業界を揺るがした山崎製パンのホームページ
実はこの強調表示の件は、業界内では以前から問題視されていて、今年1月から業界21社が加盟する「日本パン工業会」で表示に関する議論が始まっているという。
「そうした流れの中で、弊社としての考え方を示す必要があると考え、ホームページ上で分析結果を公開しました。代替技術による製法や、原材料名の表示にイーストフードや乳化剤を入れないことを否定しているのではありません。不使用の強調表示を問題視しています。ただ、他社の方から“けんか腰ではないか”とお叱りを受け、少し反省しています(笑)」(前出・佐藤氏)
ところで、この山崎製パンの分析や主張は正しいのだろうか。食品の安全に関する著書が多数ある科学ジャーナリストの松永和紀氏に訊いた。
「他社製品の分析ですので、そのまま鵜呑みにはできません。山崎製パンの中央研究所は研究開発力の高さに定評がありますが、できあがった製品を分析して何が入っているかを特定するのは非常に難しく、公開されている分析結果の正誤は私には判断できません。
ただ、この分析が間違っていたら、不使用表示をしている同業他社が反論するはずです。他社の反応を見る限り、山崎製パンの分析は正しいのではないかと思います」
そこで、実際に同業他社に確認してみた。
◆フジパンも「イーストフード・乳化剤は安全です」
業界2位の敷島製パン(パスコ)は、食パンの「超熟」で、成分表示以外の場所に〈イーストフード・乳化剤は使っておりません〉と表記している。それ以外にも、公式ウェブサイトの商品紹介のページで、〈超熟のさらなるおいしさを追求するため、イーストフードと乳化剤をなくすことにチャレンジ〉と謳っている。イーストフードや乳化剤の安全性に問題はないが、“さらなるおいしさを追求するため”に使用をやめたとしている。他のほとんどの商品でイーストフードや乳化剤は使われているので、さすがに安全性に問題があるとは言っていない。
敷島製パンに、山崎製パンの指摘は事実なのか、また、今後「不使用」表示を見直す予定はあるかを尋ねたところ、文書で「本件に関しましては、日本パン工業会で検討されている問題であり、現時点で、工業会の会員である弊社から個別に回答をいたしかねます」(同社・総務部広報室)との回答があった。