同社は、他の製パン会社の「イーストフード・乳化剤不使用」を謳うパンの成分を同社中央研究所で分析したところ、〈イーストフードや乳化剤と同等同質、あるいは同一の機能を有する代替物質を使用して製造された食パンや菓子パンであり、添加物表示義務は回避できますが、実際はイーストフードや乳化剤を使用して製造された食パンや菓子パンと何ら差のあるものではありません〉(山崎製パン公式ウェブサイトより)との結論に至ったという。
同社が指摘する添加物表示義務を回避する技術とは、たとえば、イーストフードと同じ成分を含む天然物のドロマイト(炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムを含む物質)を使い、原材料名の欄に「ドロマイト」と表示して、イーストフードの表記を避けるといった方法があるという。乳化剤についても、製造過程において原料の脂質に脂質分解酵素を混ぜて反応させ、乳化剤の一つであるグリセリン脂肪酸エステルを生成させることで、乳化剤の表記を避けるといった「技術」があると指摘している。さらに詳細を知りたい人は、当該ページで解説されているので、そちらをご確認いただきたい。
そのうえで山崎製パンは、他社が「同等同質、あるいは同一の機能を有する代替物質」を使っておきながら、「イーストフード・乳化剤の不使用」を強調するのは、〈安全性が国際的に公認され広く使われているイーストフードや乳化剤に何か問題があり、「不使用」強調表示がされている食パンや菓子パンが、食品安全面、健康面で、あたかも優位性がある商品のように誤認される恐れがあり、適切な表示とは言えません〉(山崎製パン公式ウェブサイトより)と訴えている。
しかし、ライバル社であっても直接的な批判は避けがちな日本の企業風土で、今回のような他社製品の表記にクレームをつけるケースは、非常に珍しい。
分析結果をもとに他社を批判するという、踏み込んだ対応に至った経緯について、山崎製パンに尋ねた。
◆「なぜ使用をやめないのか」と消費者からクレーム
「イーストフード・乳化剤不使用と表示した商品が出てきたのは20年ほど前からで、他社さんのことですし、当初は静観していました。しかし、ここ数年、不使用表示の商品が増えるとともに、日本パン公正取引協議会で実施している消費者モニターによる表示に関する検査会でも、毎回のようにイーストフードや乳化剤に関する質問が出るようになり、弊社のお客様相談室にも『体に悪いものではないのか』『なぜ使用をやめないのか』といったご意見が寄せられるようになりました。丁寧にお答えはしているのですが、これはお客様に誤認を与える表示で、業界として考えるべき課題ではないかと考えました」(同社社長室執行役員社長室長・佐藤健司氏)