ライフ

鎌田實医師が紹介する大人も楽しめる絵本の世界

諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師

 絵本とは、まだ満足に字が読めない子供たちに向けて、物語を分かりやすく伝えるものだと捉えられることが多い。だが、大人が自分の人生を重ねることができるような絵本も存在する。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、大人も楽しめる絵本についてお届けする。

 * * *
 最近、感動した絵本がある。『100年たったら』(文・石井睦美 絵・あべ弘士 アリス館)。昔一頭のライオンが広い草原に住んでいた。ほかの動物は食べつくしてしまって、草原には虫しかいない。

 ある日、草原に一羽の鳥が降り立つ。ライオンが近づいても逃げない。「わたしもうとべない。あんた、おなかがすいているんでしょ? わたしをたべたらいいわ」

「あいにくおれは、にくはくわないんだ。おれのこうぶつはくさとむしさ」ライオンは見栄っ張りで寂しがりやだ。

 それからというもの、二者の間に友情が生まれる。いっしょに虫を食べ、鳥はライオンのたてがみの中で眠り、歌をうたった。

 月のきれいな夜、鳥はライオンの背中から転げ落ちるようにして地面に降りた。

「わたし、もういくよ」「こんな夜にどこにいくんだよ」ライオンは鳥がどこへ行こうとしているのかわかって、泣いた。

「またあえるよ」と鳥は言った。「いつ?」「うーん、そうだね、100年たったら」

 100年経って、ライオンは岩場の貝になっていた。鳥は海の波になっていた。さらに100年経って、ライオンは3人の孫のいるおばあさんになっていた。鳥は、孫娘が持ってきたひなげしの花になった。ライオンが白いチョークになると、鳥は黒板になった。

 そして、何度目かの100年が経ったとき、ライオンは男の子に、鳥は女の子になっていた。

関連キーワード

トピックス

撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
5月13日、公職選挙法違反の疑いで家宅捜索を受けた黒川邦彦代表(45)と根本良輔幹事長(29)
《つばさの党にガサ入れ》「捕まらないでしょ」黒川敦彦代表らが CIA音頭に続き5股不倫ヤジ…活動家の「逮捕への覚悟」
NEWSポストセブン
今年は渋野日向子にとってパリ五輪以上に重要な局面が(Getty Images)
【女子ゴルフ・渋野日向子が迎える正念場】“パリ五輪より大事な戦い”に向けて“売れっ子”にコーチングを依頼
週刊ポスト
テレビ朝日に1977年に入社した南美希子さん(左)、2000年入社の石井希和アナ
元テレビ朝日・南美希子さん&石井希和さんが振り返る新人アナウンサー時代 「同期9人と過ごす楽しい毎日」「甲子園リポートの緊張感」
週刊ポスト
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
AKB48の元メンバー・篠田麻里子(ドラマ公式Xより)
【完全復帰へ一直線】不倫妻役の体当たり演技で話題の篠田麻里子 ベージュニットで登場した渋谷の夜
NEWSポストセブン
”うめつば”の愛称で親しまれた梅田直樹さん(41)と益若つばささん(38)
《益若つばさの元夫・梅田直樹の今》恋人とは「お別れしました」本人が語った新生活と「元妻との関係」
NEWSポストセブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン