第11話「春寒の候」より。この後、物語は意外な展開に。単行本では鮮やかなフルカラーで収録されている
一言で言えば(登場人物全員猫ですが)この作品は人情の物語なんだと思います。人の自然な心の動きや人間のありのままの感情の物語。だからこそ心すら飾らなければいけなくなってしまった今の読者の心にすっと入り込んできてその心に素直な感動を与えてくる。
この作品には最近の映画やドラマ、漫画や小説のような上がり下がりの激しい展開はまったく無く緩やかで穏やかなトラとミケの日常だけが描かれています。それを読んでどう感じるかはもちろん読者次第です。
しかし人間の本質に寄り添うようなこの物語は必ず読者に何か大切なものを与えてくれるはずです。
ぜひお茶でも飲みながらのんびりこの作品のページをめくっていただければと思います。
【Profile】
栗俣力也さん●1983年生まれ。TSUTAYA勤務。文庫、コミックジャンルで商品企画やイベントを手掛ける。著書に『マンガ担当書店員が全力で薦める本当にすごいマンガはこれだ!』など。
※女性セブン2019年7月4日号