「患者さんの中には、副作用を心配される方もいらっしゃいます。医師でさえも“男性ホルモンレベルを高くすると前立腺がんになりやすい”と思っている人がいますが、困ったものです。
すでに前立腺がんのある人は、テストステロンがその進行を促してしまうリスクがあります。しかし、発症リスクを高めるわけではありません。ですので通常、前立腺腫瘍マーカー(PSA)の測定をし、前立腺がんの疑いがないことが確認できてから、テストステロン充填療法を実施します。更年期障害の女性に対して女性ホルモン充填療法を行なうと乳がんリスクが高まることと混同されて“男性ホルモン悪玉説”が流布してしまったのでしょう」
実際に熊本氏のもとでテストステロン充填療法を受けた男性たちは、元気とやる気を取り戻し、目を輝かせているという。
「患者さんが私に報告してくれるのが、朝のエレクト、“早朝勃起”の回復です。そもそもなくなっていたことに本人が気づいていなかったり、問題だとは意識していなかった場合でも、実際に“明確な変化”として現われると、彼らは生き物として、男性としての自信を回復し、大変喜んでくれます。
セックスのときの勃起ばかりが注目され過ぎていますが、男性医学の基本的な立場では、無自覚で起きて明確に自認できる朝のエレクトのほうが、より生物学的に意味がある、極めて重要なことなのです」
熊本氏自身、テストステロン充填療法を受け続けており、それが“89歳の朝勃ち”につながっているという。
※週刊ポスト2019年7月5日号