「私のクリニックには60~70代の患者が多く訪れますが、多くの人は勃起できないことを“老化”として諦めてしまっている。しかし、老いを止めることまではできなくても、軽減はできる。この考え方を、私は『軽老』と呼んでいます。自分の体に起きていることをまずは受け入れて、そこで適切な処置を受ける。そうすれば、エレクトをはじめとする男性の健康は維持できるのです」
60分間の講演を終えた熊本氏は、疲れた様子を一切見せることなく、記者に「正しい勃起の取り戻し方」を説いた。
熊本氏によれば、ED(勃起不全)の最大の原因は、血管保護作用をもつ男性ホルモン「テストステロン」の分泌が加齢によって衰え、不足することにあるという。
「分泌量が減って動脈硬化が起き始めると、人体で最も細い動脈(直径1~2mm程度)である『陰茎動脈』の血流が悪くなり、EDを引き起こします。テストステロンはエレクトするうえで必要不可欠です。年齢を重ねるとED治療薬が効きにくくなるのは、このホルモンが減少するからです。つまり、“エレクトのもと”がないのに、薬で無理矢理勃たせようとしても意味がない」(以下「」はすべて熊本氏)
では、テストステロンが不足し、勃起力が衰えてきたら、どう対処すればいいのか。そうした悩みを抱える男性患者に熊本氏が施しているのが、「テストステロン充填療法」である。
「一度抜けてしまった歯が元に戻らないように、一度失われてしまったテストステロンも取り戻すことはできません。しかし、入れ歯のように“無いものを補う”ことは可能です。テストステロンを注射で補うことで、エレクトするようになったり自律神経のバランスが整ったりするなどして“元気”を取り戻せるのです」
具体的には、テストステロンを2週間に1回から1か月に1回程度、腕やお尻に注射する。費用は1回数千円程度だ。