次に、異業種の参入はどうか。AOKIはカラオケボックスや結婚式場運営、青山商事は印刷事業や焼き肉店経営、カード事業などがあるが、いずれもメインの紳士服販売を越えるほどの規模ではないし、それぞれのジャンルにはすでに先行している大手各社が存在するため、売上高の拡大はそう容易ではない。
こうした数々の苦境を打開すべく、各社とも本業(メンズスーツ販売)の立て直しを急ぎたいところだが、実現するには厳しい状況となっている。
その理由は、先に挙げたようにスーツ着用人口の減少があることに加え、10年ほど前から大手チェーン以外でも、3万~5万円の低価格オーダースーツが増加していることも要因のひとつだ。
オーダースーツでは、例えばザ・スーパースーツストアを開発したオンリーは2000年代半ばに3万8000円ほどのオーダースーツの販売を開始している。また、以前はそれなりの規模のチェーン店だったが債務超過によって買収されたエフワンも3万円前後の低価格パターンオーダー専門店になっているし、関西ローカルでは「つきむら」という低価格オーダー店もある。
さらに、2000年頃からメンズファッション誌で採りあげられてきた麻布テーラーも4万円程度でパターンオーダーが可能。2000年代後半から立ち上がったグローバルスタイルも2着4万8000円でオーダースーツができる。
もちろん、大手4社もこの流れには対応しており、青山は「ユニバーサルランゲージ・メジャーズ」、AOKIは「アオキ トーキョー」、コナカは「ディファレンス」、はるやまは「イージーセレクト」などのオーダースーツがあるが、これまでの既製スーツのように資本力の差で押し切ることは難しい。
消費者からすればオーダースーツの価格メリットや品質の違いも分かりにくい。大手アパレルのオンワード樫山も「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」を開始して販売数量を急速に拡大している中、今後は単なる低価格パターンオーダーというだけでは勝てない状況となっていくだろう。