スーツの着用人口そのものが減っていることは間違いない。もっとも人口の多い団塊の世代(現在は70歳前後)は、定年退職の年齢延長が増えているとはいえ、リタイアしている人は多い。リタイア後はスーツの着用機会が減り、カジュアルやホームウェアを着ているだろうから、彼らに買い替え需要や買い足し需要は期待できない。
もちろん、2007年ごろにはすでに団塊世代の定年退職が視野に入ってきていたから、大手4社各社はそれなりの対策を立てていた。レディーススーツの強化、カジュアルウェアの強化、異業種への進出──などである。これによってメンズスーツの落ち込みを今までカバーできていたといえる。
中でも大きかったのは、レディーススーツの強化だろう。現在、大手4社の店や別業態(青山のスーツカンパニーやAOKIのオリヒカ、はるやまのパーフェクトスーツファクトリーなど)を見ると、レディーススーツが売り場の3~4割を占めている。例えば大学生の就活を見ていると、女性はほとんどが大手4社のうちのどこかの商品と思われるリクルートスーツを着用している。
しかし、レディーススーツは男性よりも需要が少なく、ある程度行き渡ってしまえば、さらなる販売促進の強化は難しいだろう。
そして、直近で明らかになったのは、「カジュアルウェア」の苦戦である。コナカ以外の3社が展開するカジュアル業態はいずれも業績が芳しくなく政策としては成功しているとは言い難い。
青山商事は、今年2月にカジュアル業態「キャラジャ」を廃止した。ユニクロの人気が出始めていた1994年当時に開始され、一時期は低価格カジュアル店として店舗数を増やしていたが、近年は店舗数を減らし続けており、直近では4店舗にまで縮小していた。こうなるとスケールメリットも望めないから廃止は仕方ない。
また、2012年に鳴り物入りでデビューしたアメリカンカジュアルブランド「アメリカンイーグルアウトフィッターズ(以下、アメリカンイーグル)」は、この度、譲渡することが決定した。これで青山のカジュアル業態は「リーバイスストア」のフランチャイズ店(10店)以外はすべて消滅する。
AOKIのカジュアル業態も失敗に終わっている。2007年にカジュアルチェーン店「マルフル」を買収したが、業績が伸び悩んだことから自社に吸収。だが、その部署も解散に追い込まれ、マルフルは消滅した。
はるやまは、経営が傾いたカジュアルブランドの買収を積極的に行っていた。トランスコンチネンツ、イーブス、テット・オム、ストララッジョなどである。しかし、業績が低迷したことから今年2月にはイーブスとテット・オムの売却を発表。また、かつて一世を風靡したトランスコンチネンツだが、はるやま買収後は鳴かず飛ばずの状態が続いているので、個人的にはこれも早晩無くなってしまうのではないかと見ている。