もっとも、低価格の既製スーツにも次々と強敵が参入してきている。イオンやイトーヨーカドー、西友などの大手スーパーマーケットが7000円~1万円程度のスーツを導入して久しいが、カジュアル化の流れから、カジュアルブランドやスポーツブランドも既製スーツに進出してきている。ミズノやデサントといったスポーツウェアアパレルがスポーツ用の機能性素材を使ったスーツを発売しているのだ。
低価格カジュアルスーツの代表といえば、ジーユーとユニクロの勢いは無視できない。ジーユーはカジュアル用途のストレッチ素材を使ったスーツ(セットアップ=上下別々にも着用できる)を定価7000円ほどで発売している。また、ユニクロの感動ジャケットと感動ジャケットのセットアップも定価で1万円強である。
これらの利点はカジュアルアイテムとしての作り方なので、普段着にもできる点である。大手紳士服4社にもカジュアルっぽいセットアップはあるが、主力はビジネススーツであり、これをカジュアルに着こなすのは難しい。前述したようにオフィスのカジュアル化が広がっているご時世を考えると、カジュアルにも使いやすいジーユーやユニクロ、スポーツアパレルのセットアップのほうに注目がいくのも頷ける。
このように生活スタイル、消費環境、業界環境、社会構造が大きく変化する中、大手紳士服4社がこれまでのように圧倒的にシェアを取り続けることは考えにくい。もう10年以上前から分かっていてそれなりに手を打ってきてはいたが、ここにきてスーツ業界は生き残りをかけたさらなる変革が求められている。