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2019.07.15 07:00  週刊ポスト

噺家・柳亭こみち 古典を自分に寄せるため『死神』を婆さんに

 こみちが創作したのは「死神はみんな婆さん」という設定。これがラストで大きな意味を持つ。

 医者で儲けた金を女遊びで使い果たした男が「布団の半回転」で大金をせしめると、あの死神婆さんが現われる。「お前があんな目に遭わせたのは死神姐さん達の中で一番の古株。あれでアタシは姐さんをしくじって貧乏神にされることになった。これが死神として最後の仕事だよ」と男を命の蝋燭の部屋へ。

「お前は女遊びが過ぎて死神姐さん達の怒りを買い、病人と寿命を取り換えられた」。男の蝋燭は今にも燃え尽きそうだ。「じゃが、この蝋燭に火を移せたら、その分だけ生かしてやる。その代わり二度とあんなことはするな。女は怒ると怖いぞ」

 必死に火を移そうとする男に、婆さんは「そんなに手が震えると消えるぞ」とさかんに話しかける。

「もうダメじゃな、ヒヒヒ」
「うるせぇな、クソババァ!」
「な、なにっ!?」

 男の発した「クソババァ」という一言に逆上した死神婆さんは、怒りにまかせて火を吹き消す……。

「女は怒ると怖い」がテーマのこみち版『死神』。婆さんのユニークなキャラで笑いも交えて聴き応え満点、こみちならではの傑作だ。

●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。

※週刊ポスト2019年7月19・26日号

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