「1988年のアメリカで死亡事故が起きました。昭和電工が製造した合成アミノ酸『L-トリプトファン』を含む食品を摂取した38人が、原因不明の筋肉痛症候群で亡くなった。L-トリプトファンは人が生きていくために必要な必須アミノ酸で、病気の治療にも使われますが、簡単に手に入るサプリメントや健康食品に使われていたことにより、過剰摂取したことが問題視されている。
グリシンも合成アミノ酸の1つですが、添加物として摂取し続けていても絶対に体に悪影響を及ぼさないとは言い切れません」
このグリシンについて、「睡眠導入作用がある」と小薮さんは指摘する。
「グリシンには眠くなる作用があり、市販の睡眠サポートサプリメントにも使われています。しかし驚くのは、サプリメント1回分に含まれるグリシンの量が約3gの一方で、コンビニのお弁当やおにぎり、サンドイッチなどには3g以上のグリシンが含有されている。それくらいの量を使わないと、日持向上剤としての効果がないのです」
グリシンが添加された食品を食べたことによって、突然の強い眠気に襲われ、交通事故を起こす人もいるかもしれない。
さらにややこしいのは、日持向上剤である「pH調整剤」とさえ表示しないケースもあることだ。その代わりに「酸味料」だったり、「調味料(アミノ酸等)」の「等」に含ませたりして、限りなく消費者の目から隠す場合がある。どのように表示するか厳格なルールはなく、メーカー次第。そうなると、もう消費者にはお手上げだ。
そして、最も紛らわしい添加物といえば、「ビタミン」だろう。原材料名に、「ビタミンC」、「ビタミンB1」と書いてあるのを見て、健康によさそうだと勘違いしていないだろうか。「これらは栄養目的ではない」と安部さんは言う。
「ビタミンCは酸化防止剤、ビタミンB1は日持向上剤として使われています」
それらのビタミンは野菜や果物に含まれる天然のビタミンではなく、合成で作られたビタミンだ。小薮さんがその危険性を指摘する。
「天然のビタミンCは水溶性ですが、加工食品に入っているビタミンCは合成の脂溶性ビタミンの場合もあるのです。ビタミンが食品を守るように酸化することで、食品自体の酸化を防いでいます。酸化して変質したビタミンCの安全性は、まだ明確にわかっていません。
また、梅干しの保存などによく使われているビタミンB1とは、『ラウリル硫酸塩』のこと。豚肉や大豆に含まれる天然のビタミンB1には日持ち効果はありません。安全性が議論されている合成ビタミンを、さも天然の栄養分のように表記するというのは、到底納得できません」
※女性セブン2019年8月15日号