当時はまだ無名だった藤田まことを主役に大抜擢。オンタイムで見ていた私が子供の頃「この子はやけに達者な子供だなァ。セリフはしっかり言うし、なにより歌がメチャうまい。一体大阪はどうなってんだ」と思っていたら、白木みのるは立派な大人で藤田と一年違いの昭和9年生まれ。当時は吉本の大看板で大阪ではトップスターだったとあとから知った。
弟子のように白木みのるの身のまわりの世話をしていたのが西川きよしである。そして怪優とも言うべき奇っ怪な浪人・蛇口一角。財津一郎が刀をペロペロなめたり「ひっじょーにさみし~い!」などと言う。私はこの蛇道(邪道)ともいえる芸のとりこになった。今では「ピアノ売ってちょーだい」である。
そこで選りすぐりの8本が50年ぶりにこの夏、時代劇専門チャンネルで放送される。ひと足早く見せてもらったが、ゲストにクレージーキャッツ篇やらザ・タイガース篇。なんと「モナリザの微笑」まで歌っている。闇営業よりおもろいで。
◆イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2019年8月16・23日号