現在のところ、鉄道は大江戸線のみ。利用駅は当然「勝どき」だが、開業当初から朝夕の混雑に悩まされていた。特にトリトンスクエアには住友商事本社など有力テナントが入居。朝のラッシュ時にはホームから駅の出口に達するまで十数分かかったと言われている。そのせいかどうかわからないが、住友商事はその後トリトンスクエアから退去した。
「勝どき」駅ではホームの拡張工事が進められて、上下線ともに専用ホームが使えるようにはなったが、今後も人口が劇的に増加することを考えれば、現状ではかなり心もとない。BRTという新交通システムも導入されるが、その輸送力は地下鉄に比べて桁違いに低い。根本的な解決策にはなり得ないだろう。
タワマンが短期間に林立したことによって、朝夕の人の渋滞が問題になったケースはこの「勝どき」駅の他にもある。神奈川県川崎市にあるJR横須賀線の「武蔵小杉」駅だ。一時期は駅の改札を抜けるまで30分の行列ができたという。
現在、幾分緩和はされたようだが根本的に解決されたとは思えない。利用客が時間をずらして通勤していることが、緩和された最大の要因だろう。
街が華やかでも、最寄り駅の使い勝手が悪ければ魅力は相殺される。事実、「朝の30分待ち行列」の映像がテレビで何度も取り上げられ、ネットのニュースサイトでも様々に紹介されたことで、タワマンの街「武蔵小杉」の人気は、かつてほどではなくなった。まだ資産価値に反映されるほどではないが、新築や中古マンションの売れ行きには確実に影響するはずだ。
そう考えると、「勝どき」駅は「武蔵小杉」駅と同様に、人が多いことによる渋滞によって街としての魅力を大きく損なう可能性がある。さらに言えば、短期間で急成長した街は第一世代が高齢化するに従って街全体の活気が失われる可能性を秘めている。
まだ駅に近いタワマンなら、中古マンションとしての取引も活発だろう。売りやすいうえに、賃貸募集も容易。住民の新陳代謝が進みやすい。しかし、選手村跡地のマンションは「勝どき」駅から徒歩15分以上の住棟も珍しくない。そういう立地の住戸は売却しにくく賃貸も付きにくい。自然に住民や所有者の入れ替わりも少なくなる。