◆ランドセルの軽量化は進んだが…
1985年から2000年頃のランドセルは、現行より一回り小さいものが主流でした。役所の公文書がB版(B5)だったので、教科書やランドセルもB5サイズに対応し、重さは1.5kgが平均でした。
その後、ランドセルの軽量化が進み、2000年代は様々なカラーバリエーションが登場しました。また、役所の公文書も次第にA4サイズになり、教科書もA4サイズになっていきます。そして、2010年頃には、A4のクリアファイルが収納できるランドセルが出始め、そのサイズに合わせたものが市場に出回っていきました。軽量化は進んだものの、6年間持たせる耐久性や安全性から、現在では1kgを超える程度の重さになっています。
◆子どもの「健康管理」を第一に考えたメリット
ここで、教科書の重量化に伴う置き勉の是非について、押さえておかなければならない2つの大切なポイントがあります。子どもたちの「健康管理」と「学習管理」です。置き勉賛成派の声を聞くと、おおよそ次のようなメリットが返ってきます。
・荷物を軽くすることで首、肩、背中、腰など、身体的負担が減る(夏場の体力消耗も軽減できる)
・軽くなる分、登下校時の動きが楽になる(雨の日など傘の使用が楽になる/防犯上のメリットも)
・教科書の忘れ物が減る
・疲労感なく授業に入れる
・持ち物管理が軽減される
登下校時のランドセルの重さからこの問題が生じているので、子どもたちの負担軽減を第一に考えた意見が目立ちます。
◆置き勉で子どもの学力低下も懸念
しかし、そもそも置き勉問題は子どもたちの学力向上を目指し、教科書が大幅なページ増になったことが原因です。現場の学校関係者などの意見を聞くと、多くのデメリットや不安の声も挙がりました。
・教科書の管理保管の責任が不透明(学校側の負担とリスクが増す)
・教科書の保管場所が確保できない(教科書を保管する場所がない学校も)
・紛失、盗難やいたずらの対策と対応ができない
・いじめを誘発する(教科書へのいたずら描きや隠すことなど)
・予習復習の家庭学習が定着できないことへの懸念(教科書の軽視につながる)
・結果的に子供の学力低下につながる可能性
教科書の管理保管による学校側の負担増や、子供の学習姿勢や学力低下などの不安が感じられます。つまり、置き勉のメリットは体力面、デメリットは学習面と2つの側面があり、この問題の難しさを物語っています。保護者に聞いてみても、誰もが置き勉に全面的に賛成しているわけではないようです。