◆教科書自体を軽くする国の対策も急務
では、体力面と学習面の2つを同時に解決するためには、どのような対策が有効なのでしょうか。子どもたちの健康面を考えれば、ランドセルは軽いほうが身体に余計な負担をかけずに済むのは当然です。
アメリカのカリフォルニア州では、子供たちのバックパック(日本のランドセルに該当)の重量制限を「子供の体重の10%以内」という法案を可決(2014年)しています。この基準で考えると、前出の事例「20.8kgで9.7kgのランドセル」は基準の5倍近くになってしまいます。まずは、体重の10%以内を目安に持ち物を減らす努力をしてみるのはいいでしょう。
肝心の減らし方ですが、すべての教科書を学校に置いておけば解決するという単純な問題ではありません。すでに習字や絵の具などの道具類は学校に置いておくよう指導する学校は多くありますが、教科書やノート類についても工夫次第で軽量化できる対策はあります。
・主要な教科書、ノート以外は学校に保管する
(教科書とノート以外を分別し、例えば漢字・ワーク類は家庭、資料類は学校で保管するなど)
・教科書に代わる家庭学習用のプリントを充実させる
(教科書をプリント化して授業毎に配布し、終了したプリントはバインダーで管理するなど)
・学校の時間割を見直し、必須科目(国、数、算、英、理、社)の教科書使用を効率的に振り分ける
・PC、タブレット学習などデジタル教科書の推進
中には、現行の教科書を前後期の半分、もしくは単元別に“裁断”してクリップで留めるのはどうか──と教科書自体を軽くする大胆なプランまで飛び出していますが、そもそも教科書のページ構成見直しや、紙を軽くて丈夫なものに変えるといった抜本的な対策は、国(文部科学省)が積極的に取り組むべき課題です。
これまで重いランドセルを背負って登下校する子供の身体的負担まで考えが及ばない教育改革だったことを国は反省すべきでしょう。置き勉について文科省は「学校単位で考えてほしい」との通知を教育委員会に出していますが、教科書のページ数を増やすだけ増やす一方で、置き勉問題は現場に丸投げでは解決は遠のくばかりです。
教科書のデジタル化については以前から論議されていますが、予算の問題や長時間使用で視力低下(ブルーライトの影響による眼球疲労)を招く恐れもあります。自宅にあるPCやタブレットでの学習を薦めても、そうしたデジタル機器を持っていない家庭もあるため、短期的な対応策にはなりません。
いずれにせよ、置き勉問題は身体的負担と学習効果という、どちらも子どもの成長発達に影響を及ぼす内容だけに、早急な対応が必要です。賛成か反対かと一方に傾く是非論ではなく、個々の子どもの体力や学習意欲も見極めたうえで、臨機応変に対策を取ることも大切だと思います。