国立がん研究センターが8月8日、「病院選び」に大きな影響を与えるデータを発表した。『2009-2010 年5年生存率集計報告書』と題されたレポートだ。2009~2010年に、全国のがん治療の拠点病院など277施設でがんと診断された患者約57万人を追跡し、乳がん、胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がんなど11部位のがんについて、がんの進行度(ステージI~IV)ごとに「5年生存率」を集計したものだ。つまり、病院ごとに発表されたことで、がん治療においてどの病院にかかった患者がどのくらいの生存率であるのかを比較することが可能になったのだ。
そうしたデータは、患者やその家族の、がん治療に関するデータを幅広く開示すべきだという声の高まりを受け、昨年から発表されており、今年で2度目の公表となった。昨年は251病院だったので、今年はさらに26施設の情報が追加されたことになる。同報告書をまとめた国立がん研究センター・がん登録センター長の東尚弘さんはこう話す。
「データをまとめたのは、医療機関にその治療結果を振り返り、参考にしていただくのが主な目的です。進行がんや高齢の患者さんが多い施設では、結果として生存率が下がる傾向があります。ですから直接的に“生存率が高いほど治療技術が高い病院”とはならないことを念頭において、データをご覧いただきたい」
今回、女性の罹患率や死亡率が高い「乳がん」「胃がん」「大腸がん」について部位別に生存率が高い医療機関をランキング化した。自身や大切な人ががんになった時、病院選びの一助としていただきたい。
ランキングで上位に挙げられた病院を見渡すと「がん研有明病院」「大阪医療センター」といった東京や大阪をはじめとした大都市にある大病院が目立つ。『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ!』(さくら舎)の著書がある医師の近藤慎太郎さんはこう説明する。
「都市部の病院や、がんセンターなどは、いわゆる名医がいたり、インターンやレジデントといった研修医の数も多いなど、スタッフが充実しているといえます。スタッフが多ければ、がんとがん以外の病気を分けて、自分の専門分野に特化して治療に当たれるため、医師たちの技術も上がりやすい傾向にあると考えられます」
また、近藤さんによれば「名医がいる病院」もいい病院を選ぶ1つの指針になるという。
「確かに、名医がいる病院へ行ったからといってその医師が担当してくれるわけではありません。しかし、名医に指導されたり技術を見ていたりする医師は自然と技量が上がりますし、技術が学べるなら給与が下がってもその病院で働きたいと異動する医師もいる。結果的に意識と能力の高い医師が集まるといえます」