大阪・心斎橋に並ぶファストファッションブランド(時事通信フォト)
しかも、世界的に見れば、低価格ブランドはまだまだ売り上げ規模を伸ばしています。1位のZARA、2位のH&M、3位のユニクロとジーユーすべて低価格ブランドです。また4位のGAPも主力ブランドは低価格なオールドネイビーで、北米では売上高を伸ばし続けていますし、6位の激安ブランドのプライマークもヨーロッパでは好調です。
衣料品ブランドはジャンルごと、価格帯ごと、テイストごとにそれぞれ分類されますが、どの分類においても企業間・ブランド間に“優勝劣敗”は生まれるものです。売れるブランドがある反面、売れなくなって経営破綻するブランドもあります。そう考えると、今回のフォーエバー21の経営危機は、アパレル業界においては極めて日常茶飯事であるブランド間の優勝劣敗に過ぎないともいえます。
これは日本の市場でも同様です。ユニクロ、ジーユー、しまむら、ZARA、H&Mに比べ、フォーエバー21はピーク時から展開店舗数が少なかったうえ、どんどん店舗数を減らし続けてきました。ピーク時でも20店舗くらいしかなく、現在では14店舗まで縮小しています。売上高も推して知るべしといえるでしょう。
ファストファッションの盛衰という点でみると、一昨年くらいから日本ではZARAとH&Mも失速してきたと言われますが、それでもまだZARAの売上高は690億円前後、H&Mの売上高は550億円ほどあります。500億~700億円といえば、トゥモローランドやビームスと同規模で、アパレル企業としては大手といえます。
2008年に東京・銀座に出店して大人気を博した「H&M」(時事通信フォト)
そして、ユニクロは8500億円、ジーユーは2200億円くらいありますし、しまむらは全体では5400億円くらいありますから、ここに挙げた企業の売上高を合計しただけでも1兆7000億円前後となり、9兆2000億円前後の国内アパレル市場規模の18%強を占めることになります。低価格ブランドは依然として強いのです。
もちろん日本で2008年ごろから始まったファストファッションブームにおいても優勝劣敗が生じました。トップショップは早々に日本から撤退しましたし、北米では好調なオールドネイビーも2017年に日本から撤退しました。また韓国最大手のアパレル企業であるイーランドも日本ではほとんど出店できないまま、わずか3年ほどで撤退しました。
世界でも国内でも同様ですが、安ければ何でも売れるというわけではありません。商品の良し悪しはもちろん、販促の良し悪し、店作りの良し悪し、商品価格の高低──などさまざまな要素が密接に絡み合わなければ業績には結びつきません。ですからフォーエバー21の経営難は、単に商品のコストパフォーマンス以外の敗因も大きかったのだと思います。
もっとも、日本人は舶来コンプレックスが強いと言われますが、海外ブランドだからといって何でも売れるというわけでもありません。アバクロンビー&フィッチが正規店2店舗からまったく店舗数を増やせないまま今に至るのはその好例だといえますし、アメリカンイーグルアウトフィッターズが不振で運営会社だった青山商事が手放すこともその典型だといえます。
海外ブランドが相次いで苦しんでいる背景には、国内の低価格ブランドがこの10年間で大幅に成長したという要素もあるでしょう。