ライフ

玉井雪雄氏「炎上だらけの今、倫理をテーマに漫画を描く理由」

漫画家の玉井雪雄氏

 バズれば人気者、炎上すれば人として終わり──今や誰しもが、ネットやSNSのニュースや世論に一喜一憂している。そんな状況にあって話題を呼んでいるのが『エチカの時間』という漫画だ。「倫理」というテーマで現代に一石を投じるのが、漫画家の玉井雪雄氏。玉井氏に話を聞いた。

 * * *
玉井:していいこと、してはいけないこと、したほうがいいこと、するべきじゃないこと、したら怒られること、したらいい人と思われること、したら終っちゃうこと、したらどーにかなっちゃいそうなこと…などが最近ごっちゃになっている気がしていまして。それが、『エチカの時間』を描こうと思ったきっかけです。

 それらは誰が決めるのか?というと日本人の場合、よく言われることですが、その場の空気が決めてしまう。しかもSNSなどが普及したせいで、それが合議制になってしまう。“巨大な村の合議制”でしっかり議論されることなく、世の中の常識や良識が事細かく決まっていく。この事に非常にストレスを感じていたんです。

──現代の世論の作られ方に疑問があった、ということですね。漫画ではSNSの他に現代のキーワード「AI」や「AIの育倫」もテーマになっている。

玉井:これまで『知能って何だろう?』とずっと考えてきたんですが、『AIにおける知能というものの進化や発達には“肉体”が不可欠だ』という記事を読んで、AIが知能を獲得するためには、どの“立ち位置”=肉体から情報を処理するかが必要で、立ち位置を決めるのが、結局、倫理というものなのかなと思いました。それが肉体が不可欠ということかなと。だからAIに倫理というテーマはハマる気がしました。

──『エチカの時間』のタイトルに込められた意味とは?

玉井:「倫理」とか「道徳」というと、どうしても小学校の道徳の時間を思い起こさせてしまい、詰まらなさそうですね。また『モラル』と言っても最近はモラハラとかって、言葉の使われ方が怪しげな感じがして…。そんなとき、倫理哲学というのを調べていたらスピノザの『エチカ』という著作を知って、内容は読んでもなんのことやらさっぱりですが、どうやらエチカ(ethica)はethics(倫理)の語源だということで音感もいいと思ったので。

 また、倫理というのは時代とともに進化して行くものだと思っています。今、AIやインターネットや流通や仕事や家族や子育て……あらゆるものが変わっているのに、実際はなんとなく昭和の倫理観で生きている気がして。(自分だけではなく社会全体ですが)そろそろ次のエチカを考える時間だというのが、“時間”とつけた理由です。

関連記事

トピックス

「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
デフサッカー男子日本代表が異例の活動中止に…(時事通信フォト)
【デフリンピック半年前の騒動】デフサッカー男子日本代表が異例の活動中止「監督は聴覚障害に理解があるはずでしたが……」 ろう者サッカー協会が調査へ
NEWSポストセブン
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《子どもの性別は明かさず》小室眞子さんの第一子出産に宮内庁は“類例を見ない発表”、守谷絢子さんとの差は 辛酸なめ子氏「合意を得るためのやり取りに時間がかかったのでは」
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
六代目山口組の新人事、SNSに流れた「序列情報」 いまだ消えない「名誉職」に就任した幹部 による「院政説」
NEWSポストセブン
元女子バレーボール日本代表の木村沙織(Instagramより)
《“水着姿”公開の自由奔放なSNSで話題》結婚9年目の夫とラブラブ生活の元バレーボール選手の木村沙織、新ビジネスも好調「愛息とのランチに同行した身長20センチ差妹」の家族愛
NEWSポストセブン
宮城野親方
何が元横綱・白鵬を「退職」に追い込んだのか 一門内の親しい親方からも距離置かれ、協会内で孤立 「八角理事長は“辞めたい者は辞めればいい”で退職届受理の方向へ」
NEWSポストセブン