朝鮮戦争さなかの第1次改憲(1952年)では、総選挙に敗北して再選に危機を感じた李承晩大統領が大統領の直接選挙制を導入。第2次改憲(1954年)では李大統領の三選を可能にする改憲案が国会議員の3分の2に1票足りずに否決されたにもかかわらず、政府は「四捨五入すれば3分の2」と強引に可決を宣言した。

 その後も、李承晩政権が倒れると議院内閣制(1960年の第3次改憲)が敷かれたが、翌年、軍事クーデターで朴正煕大統領が政権を掌握すると、大統領中心制に戻す大改正(1962年)が行なわれる。

 この改憲で朴正煕政権は憲法前文に李承晩大統領を倒した「四・一九」民主化運動を讃える文言を盛り込んだ。朴正煕は3回にわたって改憲し、大統領が司法・立法・行政の三権の上に立って権限を集中させていく。1972年の改憲では大統領を間接選挙で選び、再選も無制限という“終身大統領”制を敷いた。

「祖国の平和的統一」が初めて前文に盛り込まれたのは、この1972年の第7次改憲である。

 当時、韓国経済は日本の経済援助をきっかけに「漢江の奇跡」と呼ばれる成長を遂げ、朴正煕大統領は経済力を背景に「祖国統一」を掲げて北朝鮮に対抗するため軍事力増強に力を入れた。祖国統一への姿勢が現在とは違っていたのだ。

 その朴正煕大統領が暗殺(1979年)されると、国軍保安司令官だった全斗煥氏が“粛軍クーデター”で大統領の座に就く。

 現在の憲法は全斗煥政権の強権政治に国民の不満が高まった1987年、大統領の直接選挙を求める民主化運動を受けて、与野党の協議で初めて民主的に改正された。こうした9回にわたる改憲の中で、建国以来一貫して憲法前文の冒頭に置かれているのが「三・一運動」という抗日独立運動を建国のルーツとする理念である。

※週刊ポスト2019年10月11日号

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