複線化すれば解決できる問題ではあるが、複線化には用地買収が必要になり、それには時間もかかり費用も莫大になる。簡単には複線化できない。また、天神大牟田線は立体交差化が進んでいないために、都市部でも踏切が多く残っている。そうした課題を一気に解決することは難しい。
天神大牟田線は、ほぼ全区間にわたってJRの鹿児島本線と並走している。天神大牟田線の所要時間が長くなれば、利用者に不便をもたらす。それは利用者離れを起こしかねない。天神大牟田線は西鉄の稼ぎ頭なだけに、利用者がJRと流れてしまえば、西鉄の経営は圧迫される。
また、2011年には九州新幹線が全通。ビジネスや観光需要を奪われる要素が増えた。
ダイヤグラムの掲載された時刻表は、そんな国鉄・JRとのスピード競争を勝ち抜くために生まれたと推察される。しかし、そこまで深く考えられて誕生したと思われるダイヤグラムの時刻表だが
「社員や関係者などはダイヤグラムを使いこなしていると思いますが、一般の利用者がダイヤグラムをどこまで使いこなしているのかはわかりません。沿線外からお越しの利用者は、特に気にすることはないかもしれません」(同)という。
時刻表を見ながら移動の行程を考える利用者はいるだろうが、ダイヤグラムまで駆使してスケジュールを組み立てる利用者は想像しにくい。ほぼディープな鉄道ファンだけだろうか。
一般利用者にとっては、主な駅の発車時刻・到着時刻だけが掲載されている時刻表でも十分と思われる。それでも、西鉄はダイヤ改正ごとに新しいバージョンを発行する。
「直近ですと、2019年3月に新しいバージョンを作成・発行しました。配布部数は3万部です」(同)
気づく人は少ないかもしれないが、ダイヤグラムまで掲載されている時刻表には西鉄の静かなる思いが詰まっている。