「ミスター・ラグビー」松尾雄治氏
大八木の笑い話は他にもありますよ。ある試合で、大八木が足を打って倒れ込んだんです。「おい、どうした? 大丈夫か」と駆け寄ったら、「平家だよ、平家が痛い!」と叫ぶ。「何言ってんだ?」と聞くと、「平家の泣き所だよ!」と言うんだよね。
みんな一瞬沈黙して「バカヤロー、“弁慶”の泣き所だよ!」と突っ込んだ。試合中なのに全員がズッコケました。
代表を乗せたバスでも大笑いでした。「おい、ヒマだからなんかやれ」と大八木に言うと、大八木は「じゃあ、“なぞなぞ”やりましょう。本城さん、問題を出してください」と早稲田の本城和彦(*2)に振ったんです。
【※2/國學院久我山、早稲田大学、サントリーでスタンドオフとして活躍。華麗なゲームメイクと甘いルックスでラグビー界のアイドルに。7人制日本代表の監督も務めた】
本城は「知らねえよ」と気のない返事。すると大八木が「早稲田なのに何も知らないんですね。じゃあ、僕が出します。行きますよ、なぞなぞの『ぞ!』」だって。
「おい、それは“しりとり”だよ!」とこれまた全員の突っ込みが入って車内は大爆笑。これが日本代表のバスの車中なんですから、そりゃあ試合で勝てるハズもない(苦笑)。
【プロフィール】まつお・ゆうじ/1954年東京都生まれ。目黒高校、明治大学、新日鉄釜石で活躍。日本ラグビー史上最高のスタンドオフと呼ばれる。明大を初の日本一に導き、1979年からは新日鉄釜石の選手、主将、監督兼選手として社会人選手権、日本選手権7連覇を達成する。
※週刊ポスト2019年11月1日号