国内

消費や貧困の末に特殊詐欺に堕ちる時代 分断される家族の苦悩

ロッカーの荷物を動かすだけの仕事の実態は「受け子」だった。

ロッカーの荷物を動かすだけの仕事の実態は「受け子」だった。

 特殊詐欺による逮捕者に「普通の人たち」が加わるようになって数年が経つ。最近では、とうとう現職警察官が受け子をしていた疑いで逮捕された。彼らは普通の人たちにまぎれていた特殊な人たちだったのか?特殊詐欺関連の取材を続けるライターの森鷹久氏が、家族が特殊詐欺で逮捕され戸惑う家族の声から、普通と特殊の間に横たわるものについて考えた。

 * * *
「いい加減にしてくれ、俺たちは何も関係ない」

 昨年、特殊詐欺で逮捕された男の関西地方在住の家族に電話取材をした際、その父親Aさん(60代)は当初、憔悴しきった様子で筆者の問いかけに答えていたが、ついには怒鳴り散らして一方的に切った。しかしその後、1時間も経たないうちに筆者の携帯に電話をかけてきたのも、また同じAさんだった。

 つまるところ、息子が特殊詐欺で逮捕され、その息子の一番近しい存在であることは認めるものの、何も情報がない。取材をして何か知っているのであれば、逆に情報を教えてくれないか、そう懇願してきたのである。

 このようなことは、特殊詐欺事件を取材している中で度々起きた。息子が特殊詐欺事件で逮捕されたという、九州地方在住に住む男性Bさんに取材をした時もそうだった。

「私は何も知らんのです…ところで、なぜ私のことがわかったんでしょうか? 逮捕後の息子とは一度も連絡を取っていない。取材に来た記者さんにどうなっているのかと聞くくらいで…」

 特殊詐欺といえば、巨大で凶悪な犯罪組織が関与している重大犯罪である、という認識が根強い。だからこそ、まさか「普通の」息子や家族が、特殊詐欺に関わるとは信じられないと、家族は大きな衝撃を受ける。そうした認識は一方で正しい。しかし取材を続けていくうちに、特殊詐欺とは、誰もが、明日にでも関わってしまう危険性を秘めている「手軽な犯罪」であることがわかる。

 特殊詐欺事件は、2000年代前半ごろから勃興した新型犯罪だ。何者かになりすまし、電話をかけた相手から金品を騙し取る、という基本形はそのままに、架空請求詐欺や還付金詐欺から始まり、今では現金の他に、デジタルマネーを騙し取る形も主流となっている。

 逮捕されるのはもっぱら暴力団員や、半グレと呼ばれる暴力団と近しい若者たちだったが、近年では一般人が、そして現職の警察官、消防士、元プロスポーツ選手まで特殊詐欺事件の「かけ子」や「受け子」として摘発されるほど多様な人々が関わるようになった。その多くは、貧困に屈したが末に、SNSなどで「高額報酬バイト」などの書き込みを見て、自ら詐欺事件に加担するというパターンだ。

関連記事

トピックス

被害男性は生前、社長と揉めていたという
【青森県七戸町死体遺棄事件】近隣住民が見ていた被害者男性が乗る“トラックの謎” 逮捕の社長は「赤いチェイサーに日本刀」
NEWSポストセブン
体調を見極めながらの公務へのお出ましだという(4月、東京・清瀬市。写真/JMPA)
体調不調が長引く紀子さま、宮内庁病院は「1500万円分の薬」を購入 “皇室のかかりつけ医”に炎症性腸疾患のスペシャリストが着任
女性セブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
1980年にフジテレビに入社した山村美智さんが新人時代を振り返る
元フジテレビ・山村美智さんが振り返る新人アナウンサー社員時代 「雨」と「飴」の発音で苦労、同期には黒岩祐治・神奈川県知事も
週刊ポスト
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
女性セブン
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
タイトルを狙うライバルたちが続々登場(共同通信社)
藤井聡太八冠に闘志を燃やす同世代棋士たちの包囲網 「大泣きさせた因縁の同級生」「宣戦布告した最年少プロ棋士」…“逆襲”に沸く将棋界
女性セブン