詐欺なんてとんでもないと厳しくなる一方の世間の目と、特殊詐欺に手を染める普通だったはずの人たちの犯罪に対する軽さ。二者の間に横たわる感覚の溝は、もはや埋め方が分からないほど深くなってしまったのではないか。犯人の家族は、その狭間で何も知らされず、そして何の反論も許されることなく、息を潜め、世間から隠れるようにして過ごすことを強要される。

 また、一般人が詐欺を働くような”特殊な”人物へと変貌すると、家族も第三者も驚くかもしれない。しかし、特に受け子や出し子といった「犯行」は、SNSなどによって「簡単なバイト」として人員が集められ、出し子や運び屋であれば、被害者と対峙する必要もなく、だからこそ罪の意識を一切感じることなく、いつの間にか「正当な仕事と報酬」を受け取っているような錯覚を抱くほどだ。

 実際に特殊詐欺に関わった人々は、周囲が思っているより罪の意識は格段に低い。自分が卑劣な犯罪者という”特殊な人間”に成り果てたことにも気が付いていない。無論そこには、食うに困ったとしても犯罪を「やるか」「やらないか」の判断は当然あり、多くの人は後者を選ぶだろうが、昨日まで普通だった人がいとも簡単に”特殊な”人間になってしまうシステムができているのが実情だ。

 いうまでもなく特殊詐欺は犯罪である。特殊詐欺に手を染めた人間は、法律に沿って相応の罰を受けねばならない。しかし昨今、犯人たちの境遇をあざ笑うだけ、その浅はかさを愚かだと唾棄するだけで、犯行に至った背景について調査や議論をし、犯行に手を染めようとする可能性のある追い込まれた人々の救済方法は語られない。

「心配してくださってありがとうございます。私もどうしていいかわかりません。本当に申し訳ないとしか…」

 齢80と高齢であるCさんの涙は、罪を犯した男、その家族にとって後悔を抱かせずにはいられないものだろう。しかし彼らが抱える悔恨は、私や読者に一切関係のないことなのか、分断された別の世界で起きている他人事なのか。改めて考え直してみたい。

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン