家事に育児に仕事にと、何かと忙しい現代女性。子供の病気ならともかく、自分のこととなると、ちょっとした不調なら市販薬で治そうとする人は多い。
市販薬は、受診せずとも手軽に手に入るのはありがたいが、一方で自己判断で誤ったチョイスをしたり、成分や効能をろくに確認せず購入する人も少なくないだろう。
『薬は減らせる!』(青春新書インテリジェンス)の著者で薬剤師の宇多川久美子さんは、そうした薬選びに警鐘を鳴らす。
「市販薬は、医師が処方する薬と違って、症状を一時的に緩和するだけのものだったり、余計な成分が思わぬ副作用を招くこともあるので、注意が必要です」
具体的にどんなものに気をつけるべきだろうか。
◆点鼻薬は使い続けると鼻炎に
ものもらいができると目薬をさすが、どの目薬でもいいというわけではない。
「病院では、ものもらいの治療に抗菌剤入りの目薬を使用しますが、多くの場合、市販の目薬は眼精疲労に対処するもので、抗菌剤は入っていません」(宇多川さん・以下同)
また、眼精疲労でも使いすぎは、病気の原因になる。
「疲れたからといって頻繁に目薬をさしていると、目の中に涙液のようなものを入れ続けた状態になるため、自分で作るはずの涙液を作らなくなり、ドライアイを招きます」
点鼻薬も安い商品に要注意。
「市販の点鼻薬には『ナファゾリン』という血管収縮剤が入っているものが多く、鼻の粘膜の腫れを抑えて鼻づまりを解消します。
しかし、薬が切れると反動で蛇口をひねったようにどっと症状がぶり返してしまう。繰り返し使っているうちに鼻の粘膜が肥厚し、鼻づまりが悪化して『点鼻薬鼻炎』になることもあるのです」
◆貼付剤の貼りっぱなしは悪化を招く
腰や膝の痛みに市販の湿布などの貼付剤でやり過ごす人は多い。市販品も医療用も貼付剤には、いわゆる「湿布」と呼ばれる白い厚めの「パップ剤」と、肌色で薄い「テープ剤」の2種がある。
だが、加藤整骨院院長の加藤進さんは、どの市販の貼付剤も「抗炎症効果はない」と話す。
「市販の貼付剤には、メントールなどヒヤッとする成分が入っており、最初だけ冷たく感じますが、炎症熱を取るまでの力は全く足りません。例えるなら、熱いやかんを湿布で冷やすようなもの。貼り続けると、熱を取るどころか毛穴を覆うため排熱できず、逆に悪化します」
新潟大学名誉教授の岡田正彦さんも同様の見方だ。