なぜこれだけの実績をあげ続けているかについては、さまざまな要因があり、とても1ページでは書き切れないが、根底にあるのが「馬ファースト」。何よりも馬の立場になって考え、管理馬1頭ずつの個性を大事にして接していくことだ。
平成10(1998)年にタイキシャトルでフランスのGIジャック・ル・マロワ賞を勝つなど、早い時期から海外競馬に目を向け、国際派ともいわれている。しかし、今年12月の香港国際競走へは49頭もの日本馬が予備登録をしたが、藤沢厩舎の所属馬は1頭もいないし、毎年3月のドバイワールドカップデーに送り込む馬もけっして多くはない。レースを目標に調教を進めるのではなく、あくまでも馬の気性や体調を優先するからだ。クラシックのトライアルを勝ったにもかかわらず、本番への出走を見送ることもあるぐらいだ。
この9月で68歳になったが、今年もすでにGI2勝を含む重賞6勝でリーディング8位。令和でも最前線で走り続けている。
ところで藤沢厩舎の馬から馬券を買えば「儲かる」のだろうか。「藤沢厩舎だから」と人気になることが多く、高配当が期待できることは多くないが、1番人気になったときの連対率はほぼ平均、2番人気になったときの連対率では平均を大きく上回っており、軸馬としての信頼度は高い。ただし今年に限っては、3番人気以下では3勝。穴党向きではないことは確かだ。
●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
※週刊ポスト2019年11月22日号