そして、大井川鉄道は2016年から企画ツアーとして星空列車の運行を開始。その経緯について、大井川鉄道南アルプスアプトセンターの担当者はこう説明する。
「沿線の川根本町は、1994年に環境庁(現・環境省)が全国星空継続観察によって国内で2番目に星空観察に適した場所と認定しています。そうした沿線の特徴を活かそうと、奥大井湖上駅で星空観察のために下車する“星空列車”の運行を開始したのです」
2016年に企画列車として始まった星空列車は、好評を博したことから2018年1月に一般列車に切り替えられた。
「一般列車として運行しているので、星空列車への乗車には特に予約といった申し込みは必要ありません。また、星空列車に乗車するには専用乗車券を購入する必要がありますが、通常の運賃と同額です」(同)
奥大井湖上駅は無人駅で、鉄道ファンからも秘境駅と呼ばれる。駅の一帯はダム湖が広がり、こうした星空観察といった用事がなければ下車することはまずない。
そうした秘境駅の雰囲気を味わうことと星空観察という2つの楽しみがパッケージされているので、毎回の参加者は80名にものぼるという。
近年は夜の経済活動、いわゆるナイトタイムエコノミーに注目が集まっている。ナイトタイムエコノミーのメインターゲットは今のところ観光客だが、社会が多様化することで観光客以外にも広がる可能性を秘めている。
JR西日本が終電を繰り上げる方針を示したのは時代の流れとも言えるが、その一方で夜間に稼ぐことを模索するローカル私鉄が出てきていることも多様化する時代の要請といえるのかもしれない。