岳南電車が運行する夜景電車は、夜景鑑賞士が同乗。沿線の見どころなどをガイドする。夜景電車は車内照明を落とすため、車内は真っ暗になる。それが、沿線に立地する工場夜景を鮮明に見せる効果を出している。インスタ映えのブームとも重なり、夜景電車の運行は大きな話題を呼んだ。
この取り組みが夜景観光コンベンション・ビューローに評価されることになり、岳南電車は国内の鉄道としては初となる夜景遺産に認定された。
これらが岳南電車の夜景電車人気に火をつけることにつながる。2015年は貸切運行ではなく、通常の電車として運行。以降も夜景電車は通常の電車と同じように運行されている。夜行電車の運行日は月2回あり、日没が遅い6~8月は1往復しか運行しないが、そのほかの月は2往復するダイヤが組まれている。夜景電車には特別料金はかからず、運賃のみで乗車することができる。
岳南電車はローカル私鉄なので、夜景を楽しむための展望台を新設することやイルミネーションで沿線を飾るといった費用をかけた整備はできない。既存のインフラを活用し、新たな設備投資をしていない。発想を転換することによって、需要を掘り起すことにつながった。
「岳南電車は住宅街に近いところを走るので、工場萌えでブームになったような煌びやかな工場夜景はありません。あくまでも、日常風景に溶け込んでいるような工場夜景です。それでも工場夜景を見ようと、たくさんの人が遠方から足を運んでくれます。小さなお子さんを連れた家族の参加者も多数います。混雑した、暗い車内は危険です。そうした小さなお子さんを連れた家族連れのために、通常の夜景電車のほかにも予約制の貸切夜景電車も運行しています」(同)
静岡県島田市の金谷駅から静岡市の井川駅まで約65キロメートルを結ぶ大井川鉄道も、夜景をウリにした新しい集客を始めている。もともと、大井川鉄道はSLの運行を始めた先駆けとして知られるが、2014年からは機関車トーマスの運行といった斬新な集客で話題を呼んだ。さまざまな手法で、大井川鉄道は需要拡大を図ってきた。