テレビで映画を放送しない理由は、やはり前述したように「視聴率にかなりの落ち込みが見られる」から。かつて各局が映画専門の放送枠を持った時代がありましたが、現在では完全に消滅。「金曜ロードSHOW!」も「土曜プレミアム」も、映画だけでなく単発のスペシャルドラマやバラエティも放送される特番枠に変わるなど、映画のプライオリティは明らかに落ちているのです。
視聴率が取れなくなった理由は、「視聴者を取り巻く環境が変わり、テレビと映画の親和性が崩れた」から。もともと映画はドラマと並んで「録画してじっくり見る」タイプのコンテンツであり、リアルタイムで見ることが前提の情報番組、バラエティ、スポーツ中継よりも不利な立場でした。その状況が録画機器の発達で、さらに進行したのです。
また、映画専門の放送枠があるころはレンタル店のみがライバルでしたが、CSやBSでも多くの作品が見られるようになり、近年はネットの動画配信サービスで見る人が増えました。映画が好きな人ほど「テレビの地上波以外で見る」ように変わったのです。
好みのジャンルが分かれるなど嗜好性の高いコンテンツである映画は、「見たいときに、見たいものを、見たい場所で」というユーザビリティの高さが重要。その点でテレビは動画配信サービスよりも圧倒的に不利であり、映画フリークたちの支持を得られていません。一方、一般の視聴者も「テレビではジブリなどの名作をイージーウォッチングするくらいでいい」と思っている人が多く、「話題作の地上波初放送ですら視聴率が取れない」というケースが多発しています。
もう1つ、映画のテレビ放送が減っている理由として挙げておきたいのは、不便さとクレーム対策。テレビ局には番組表があり、前後の番組を踏まえて編成する上で、作品によって長さの異なる映画への対応は難しいものがあります。それに加えて近年は、「放送するならノーカットで」と求める視聴者の声が大きくなり、「なぜあのシーンをカットした?」「なぜここでCMを入れた?」などのクレームが少なくありません。
分岐点の1つと言えるのが、2017年3月4日にフジテレビが放送した『アナと雪の女王』(今年11月15日の日本テレビ放送は3回目)。本編はノーカットで放送したものの、エンドロールを早送りにしつつ、その分を一般人、タレント、アナウンサーに歌わせ、別の映画をPRする演出も入れたことに批判が殺到したのです。視聴率19.7%を獲得してなお、大きな批判を受けたことで、各局はこれまで以上に慎重な姿勢を求められることになりました。
◆いまだキラーコンテンツを抱える日本テレビ