ただ、それでも各局が製作をやめないように、テレビ局から見た映画は有料コンテンツであり、放送外収入として貴重なもの。「視聴率が取れないから、なかなかテレビで放送はできないけど、自局が培ってきたノウハウを生かせるし、当たれば大きいなど、製作する価値があるもの」なのです。
また、かつては「ドラマがヒットしたら映画化を考える」という流れが一般的でしたが、近年では「企画段階から映画化が既定路線のドラマ」も少なくありません。
たとえば、昨春に放送された『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)は、平均視聴率8.9%に留まったものの、今年5月に映画版が公開。さらに、来年5月に映画第2弾の公開が発表されました。同作はファンの多い脚本家・古沢良太さんのオリジナル作であり、当初から「映画版も含めてシリーズ化できたら」という思惑があったようなのです。『踊る大捜査線』『海猿』などをシリーズ化してヒットさせた過去も含め、フジテレビが今なおテレビでの映画放送を大切にしている理由がわかるのではないでしょうか。
一方、日本テレビの「金曜ロードSHOW」は、再放送でも2桁視聴率が狙える映画コンテンツを多数抱えています。『ルパン三世』『名探偵コナン』『スタジオジブリ』『スタジオ地図(細田守監督作)』などのキラーコンテンツがあり、ファミリー層を取り込むことが可能。これらの映画は、テレビで放送されることで人気を確立し、以降は視聴率で貢献するなど、日本テレビと映画はいまだ幸福な補完関係にあるようです。
テレビ局にとって重要なコンテンツだった2時間ドラマ専門枠が消滅したことを考えれば、CS、BS、配信サービスなどさまざまな形で見られる映画のテレビ放送が減るのは必然の流れ。今後は現在以上に、「映画のテレビ放送は、名作やヒット作のみを特番枠の中でときどき」という形が避けられないでしょう。
これは裏を返せば、「テレビ局発のヒット映画が増えるほど、映画のテレビ放送も増える」ということ。やはり「自社制作のヒット映画をどれだけ作れるか? どこまでシリーズ化できるか?」が鍵を握っているのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。