国内1000店舗目標は絶望的か?

国内1000店舗目標は絶望的か?

◆相次ぐ値上げで客離れを引き起こす

 決定的だったのは、「仕入れが困難」という理由でたびたび値上げをしたことだ。「量り売りといっても、たいして安くない」(20歳代のサラリーマン)といった声が挙がっていたうえ、2018年5月には「国産牛サーロインステーキ」と「国産牛リブロースステーキ」を1グラム当たり1円値上げして11円とした。じつに値上げ率は10%だ。

 公式サイトの全店共通のメニューによると、一番上に表示されているのが「リブロースステーキ」。量り売り価格は1グラム当たり6.9円(税抜き)。昨年7月以前と比べると0.4円高くなった。300g定量カット×6.9円=2070円(税抜き)、400g×6.9円=2760円(同)。これを「安い」と考える消費者は、どれくらいいるだろうか?

 サラリーマンがよく昼食に注文するのは「CABワイルドステーキ」で、こちらは200g1130円(税抜き)、300g1390円(同)と安価だが、メニューの末尾に載せていて、しかも扱っている店は数えるほどしかない。

 相次ぐ値上げで値ごろ感を失った──。これが客離れを引き起こした最大の原因である。

◆「郊外店」が大苦戦を強いられる店舗戦略の失敗

「いきなり!」の店舗は駅前を中心に立地していたが、2017年5月、群馬県高崎市で初の郊外店を出店したのを皮切りに、出店エリアを都心から地方に拡大した。2018年の大量出店も半数は郊外だ。

 主に閉店したコンビニエンスストアの店舗などを活用した結果、店舗網は47都道府県に広がった。もちろん郊外は都心に比べ出店余地が多いうえに、家賃も安い。だが、すでに店&商品に客を引き寄せる魅力が薄れ始めていた同店が郊外に、しかも多数立地すれば結果は目に見えていた。

 また、特にフランチャイズ(FC)店の新規出店が目立った。店舗数472店のうちFC・委託店は4割強を占めるようになった(2019年6月末)。

 業績不振に陥ったラーメンチェーン大手の幸楽苑ホールディングスがフランチャイジーとなって、2017年12月、1号店を福島市内に出し、その後もFC店を次々と出店した。幸楽苑を皮切りに外食チェーンのFC店が急増したのである。

 だが、FC店はいずれも郊外の路面店だ。その結果、1つの商圏で複数出店するケースが続出。客を奪い合う深刻なカニバリーゼーション(自社競合)が起きてしまった。ペッパーフーズは店を増やすことだけに目を奪われ、「1つの商圏に店は1つ」という基本ルールから逸脱したのである。

 一瀬邦夫社長は、メディアとのインタビューで〈お客様の取り合いを避けるために店同士をしっかり離さなければならないことが分かりました〉と語っている。こうした出店戦略の誤算も「いきなり!」の失速につながった。

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