孫の活躍を沖縄から見守る祖父は「よき相談相手」として田村選手の人生に指針を与え続けている。
「昔はよく口喧嘩をしましたが、社会に出てからはいろいろなことを相談してきます。お父さんやお母さんに相談できないことでも、私になら相談しやすいんでしょうね。所属チームをやめて新しいチームに移る時や、プロになる時などは相当悩んでいましたが、そうした時でも相談がありました。何か決断する時には必ず電話してきます」
そう語る高江洲さんが唯一注文を付けるのは、楕円球を持たない時もフィールドで見せるような「ひらめき」で行動する点だ。
「何をするにも突然なんです。東京から電話してきて『明日行くからね。おじいちゃん』ということがよくあります。沖縄に来るときはほとんど直前に連絡がある。この間、那覇の球場で侍ジャパンの始球式をした時も、当日になって『おじいちゃんとおばあちゃん来てくれ。切符取ってあるから』って。前もって言ってくれればいいのに(笑い)」(高江洲さん)
沖縄にルーツがあることを思わせる彫りの深い顔立ちで、ラグビー界屈指のイケメンとしても知られる田村選手。その将来に祖父がエールを送る。
「孫の活躍はとても嬉しいです。以前は『この僕の孫』だったのが、最近は逆転して『あの孫のおじいちゃん』になった。『孫の七光り』です(笑い)。あとはぼちぼち身を固めないとね。『もうぼちぼち結婚せんとお前、60歳過ぎまで子供の学費を払うことになりかねんぞ』と言ったこともあるけど、優は何も言わず笑っていました。まあ元気で体を壊さないようにして、いつかいい家庭を築いてもらえればと思います。本人もある程度年齢がいったら、沖縄で暮らしたいという気持ちもあるみたいです」
電話取材の最後、孫思いの高江洲さんは筆者にこう伝えて受話器を置いた。
「みなさんもどうか、ひとつ温かい目で見てやってください。よろしくお願いします」
●取材・文/池田道大(フリーライター)