国内

JR成田線湖北駅 一部撤去「行商台」持ち主探しまでの顛末

湖北駅に張り出された持ち主を探す貼り紙

湖北駅に張り出された持ち主を探す貼り紙

 JR成田線・湖北駅に張り出された「行商台について お知らせ」が、SNSで話題を集めている。ホームの工事にともない撤去を予定しているのだが、所有者が分からないため名乗り出て欲しいというものだ。ライターの小川裕夫氏が、行商台とは何に使われ、これからどのように変えられてゆく予定なのか、レポートする。

 * * *
 JR成田線のホームには、ベンチにしては位置が高すぎる鋼鉄の物体が今も残されている。これはかつて、行商人が背負うカゴを置く行商台として利用されていた。

 行商とは、注文を受けて配達するのではなく、買ってくれる客がいそうな地域に商品を運搬しながら販売する商行為で、それを行う人たちは行商人と呼ばれる。江戸時代から続く富山の薬売りも行商人の一種だ。明治期以降は各地に鉄道が敷設されたこともあって、行商人たちの行動範囲や販路は急速に広がった。関東大震災(1923年)をきっかけに千葉や茨城の農村や漁村から、大きな風呂敷を担いで野菜や鮮魚などを売り歩く行商が盛んになったと言われる。行商は農家にとって貴重な現金収入を得られる機会でもあるが、交通網の発達で販路が広がったことによって、行商は活発化した。

 行商人が背負うカゴは、一人あたり約60キログラム。体力のある若者でも、毎日60キログラムの荷物を背負うのは身体的にシンドイ。できるだけ体力を消耗しないように、行商人たちは列車内で荷物を置いて体を休めた。また、ホームで列車を待つ間も体に負荷をかけない工夫がなされた。それが、ホームに設置された行商台だ。

 行商台は、一見すると鋼製の簡素なベンチのように見える。しかし、腰を掛けるには位置が高い。これは行商人が背負ったカゴを置くために設計されているからだ。そのため、背負ったまま荷物を置くにはちょうどいい高さになっている。たくさんの行商人たちが乗降した駅には、こうした行商台が何台も設置されていた。

関連記事

トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン