翻訳家の鴻巣友季子氏
日本が英文法主義を返上し、会話に力を入れて数十年、話す能力は上がらず、読む能力が下がった。先日、相談に来た学生に、「大学で英文法を自力でやり直し、やっと英語力が伸びた」と聞いた。彼のように「やっぱり文法の土台がないとだめじゃん」と気づいた人たち、あるいは前々から不安に思っていた人たちの心を射抜いたのが、『ヘミングウェイで学ぶ英文法1・2』だ。文法書としては異例の大ヒット。この作家を教材に選んだのも圧倒的勝因だろう。語彙や構文は平易でも、重層的な解釈が可能で味わい深い。
来年こそ、耳触りの良い言葉より内容、そんな当たり前のことが再認識されるだろう。総理も国連から、「美しい演説より具体的な計画を」と注意されていましたね。
※週刊ポスト2020年1月3・10日号