ではどんな時にどんな対応が有効なのか。
医療者や介護職の人が書いた認知症の対応マニュアル本も出ているが、それらは専門的な経験に基づいたエキスパートオピニオンや、脳や病気のしくみから推測したもので、有効性の確率は検証されていないと數井さんは言う。
「そこで私たちは、実際の認知症患者さんに対するさまざまな対応がどのくらい有効なのか、全国的な大規模調査を実施。継続的に情報を収集しながら公開しているのが『認知症ちえのわnet』です」
ここでできることは、まず[ケア体験]の投稿と閲覧だ。
ケア体験とは【1】BPSDの内容、【2】それにどう対応したか、【3】その対応がうまくいったか否か。会員登録をして自分の体験を投稿したり、ほかの人のケア体験を一覧で見たり。數井さんら専門医が情報を確認して集計した[うまくいった/いかなかった体験]の集計結果を、グラフ化した数値(%)で見ることもできる。
また症状別の簡単な質問にイエス・ノーで答えていくと対応方法が提案される[認知症対応方法発見チャート]は、対応方法の悩みを投稿すると、成功経験のある人がアドバイスしてくれる[対応方法を教えて!!]のコーナーもある。
「実際にケアをする家族や介護職の人たちからの貴重なデータベースでもあります。蓄積されたデータを分析することで『ある症状に有効な対応策』のほか、『その対応がなぜ有効か』も科学的に解明されつつあります。
たとえば入浴などの“拒否”には『一段階ずつ細かく促す』という方法が有効。今いる場所から湯船につかるまでには、実はたくさんの動作や移動が必要ですが、認知症の人はそれがわからなくなっているのです。また『誰かのために』という動機付けをするのも有効だとわかってきています」
◆柔軟な対応を心がける 認知症の正しい診断も