国内

海賊版サイトはWEBサービス会社への責任追及で撲滅できるか

海賊版業者が得意先となっているWEBサービス会社にも責任問えるか(イメージ)

海賊版業者が得意先となっているWEBサービス会社にも責任問えるか(イメージ)

 空港の税関で荷物検査を受け、そこで違法な品物が見つかれば没収されるし、運んできた人は内容物を知らなかったと主張しても取り調べを受けるし逮捕されることもある。ところが、これがインターネット上だと同じようにはいかない。海賊版をユーザーの手元に迅速に届けるためのサービス、いわばネットの運び屋のようなことをして海賊版業者のビジネスを実質的に助長しながら、被害の調査や防止への協力をいっさい拒んできた世界最大手の事業者に責任を認めさせるための動きについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 漫画や映画、小説、音楽に至るまで、世の中のありとあらゆる「コンテンツ」が、著作権者を無視してネット上に違法にアップロードされる事例が後を絶たない。昨年は、悪名高き海賊版漫画サイト「漫画村」の運営者がついに特定され、逮捕されたことも記憶に新しい。あらゆるテクノロジー、そして日本の司直の手が及びづらい第三国のサービスを駆使して身元を隠そうとも「違法は許されない」という正義が打ち勝ったようにも思えた。

 しかし、海賊版サイトの一掃は「不可能ではないか」と言われてきたのも事実だ。「漫画村」の件を追い続けてきた新聞記者が言う。

「著作権者や出版者が、違法サイトの管理人に連絡しても無視されてきたという現実。違法データを置いておくサイトのホスティング業者、そしてサーバー業者、閲覧者がそのデータ利用をしやすいように調整する役割を果たす業者(コンテンツデリバリーネットワーク=CDN)も、日本の法律が有効でない国にある場合がほとんどで応じてくれない。守られるはずの著作権者は、自身の作品が第三者の手によって違法に拡散されたり、販売されるのを黙って眺めているしかなかった」

 国境のないネット上での犯罪が、なかば野放しにされてきた現実を認め、まさに「打つ手なし」ということで、日本政府はこうした違法サイトに国内からの接続をさせないための「ブロッキング」実行の是非について有識者会議を開いたほどだ。しかし、こうした現状に一石を投じる動きが明らかになった。

「違法にアップロードされたデータと示されているにもかかわらず、何らの措置を取らず、保管や通信に関与して、結果的に不特定多数のユーザーに閲覧させていた疑いがあるとして、アメリカの業者に差し止め請求と損害賠償を求める訴訟を起こしました」

 こう話すのは東京フレックス法律事務所の中島博之弁護士。被告であるアメリカの大手CDN業者・X社は再三にわたる違法コンテンツの削除・差止請求に対し、基本的に自分たちはコンテンツのホスティングを行なっていないため、コンテンツへのアクセスを削除、または無効にすることはできないと主張してきた。

 その理屈の根拠としているのか、X社はサーバー(データセンター)上に保管・流通するデータが違法かどうかを監視しない、検閲をしないという基本姿勢にある。そして、違法なデータであると権利者より削除や差し止めの申し立てを受けても、根本的な違法データ削除や無効化は自分たちでは不可能だとして、海賊版サイト事業者へX社によるサービス提供が停止されることはなかった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

主演映画『碁盤斬り』で時代劇に挑戦
【主演映画『碁盤斬り』で武士役】草なぎ剛、“笠”が似合うと自画自賛「江戸時代に生まれていたら、もっと人気が出たんじゃないかな」
女性セブン
かつて問題になったジュキヤのYouTube(同氏チャンネルより。現在は削除)
《チャンネル全削除》登録者250万人のYouTuber・ジュキヤ、女児へのわいせつ表現など「性暴力をコンテンツ化」にGoogle日本法人が行なっていた「事前警告」
NEWSポストセブン
水卜麻美アナ
日テレ・水卜麻美アナ、ごぼう抜きの超スピード出世でも防げないフリー転身 年収2億円超えは確実、俳優夫とのすれ違いを回避できるメリットも
NEWSポストセブン
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
電撃閉校した愛知
《100万円払って返金は5万円》「新年度を待ったのでは」愛知中央美容専門学校の関係者を直撃、苦学生の味方のはずが……電撃閉校の背景
NEWSポストセブン
遺体に現金を引き出させようとして死体冒涜の罪で親類の女性が起訴された
「ペンをしっかり握って!」遺体に現金を引き出させようとして死体冒涜……親戚の女がブラジルメディアインタビューに「私はモンスターではない」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
”うめつば”の愛称で親しまれた梅田直樹さん(41)と益若つばささん(38)
《益若つばさの元夫・梅田直樹の今》恋人とは「お別れしました」本人が語った新生活と「元妻との関係」
NEWSポストセブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン